カワチブシ

カワチブシ（河内附子）

カワチブシ（学名：Aconitum grossedentatum）は、キンポウゲ科トリカブト属に分類される多年草の有毒植物です。日本固有種であり、本州の太平洋側、関東地方から近畿地方、そして四国に分布しています。山地帯の林内や林縁、草原などに自生し、多様な生育環境に適応して形態的な変異を示すことが特徴です。

特徴

カワチブシは、生育場所によってその姿を大きく変えます。林縁や林内では茎が斜めに伸びて先端が垂れ下がる一方、草原では直立して50cmから180cmほどの高さになります。茎は中部付近でよく分枝し、葉は五角形から円形で、3つに深く裂けています。裂片の縁は粗い鋸歯状、またはさらに深く裂けて羽状になることもあります。

花期は8月から11月で、青紫色の花を咲かせます。ただし、まれに黄白色の花をつけることもあります。花は散房状、総状、円錐状の花序に1個から10個ほど付きます。花びらのように見える部分は萼片で、上萼片、側萼片、下萼片の5つで構成されています。上萼片は円錐形または僧帽形で、長い嘴があります。花弁は上萼片の中に隠れており、距と呼ばれる蜜を分泌する部分を持ちます。

果実は袋果で、種子は長さ4mm程度です。染色体数は2n=32の4倍体種です。

分布と生育環境

カワチブシは、日本固有種であり、本州の太平洋側（神奈川県・群馬県から和歌山県まで）と四国に分布しています。山地帯の林内、林縁、または草原に生育します。

鈴鹿山脈や紀伊山地に分布する小型の個体は、アシブトウズまたはオオダイブシとして分類されることもありましたが、現在ではカワチブシの草原型として扱われています。また、四国山地に分布し、葉が3全裂するものはシコクブシとされることが多いですが、これもカワチブシのシノニムとなっています。

名前について

カワチブシの名前は、タイプ標本が大阪府の金剛山で採集されたことに由来します。金剛山が旧河内国に属していたため、「河内附子」と名付けられました。

種小名のgrossedentatumは、「非常に大きい鋸歯の」という意味を持ち、葉の縁にある特徴的な鋸歯にちなんでいます。

保全状況

カワチブシは、国レベルでのレッドデータブックやレッドリストには選定されていませんが、岐阜県、大阪府、和歌山県では絶滅危惧II類に指定されています。

分類

カワチブシは、トリカブト属トリカブト亜属のうち、キヨミトリカブト節に属します。この節の中で、花が花序の上から下に向かって開花するヤマトリカブト列に分類されます。ヤマトリカブト列には、カワチブシの他に、ウゼントリカブト、オンタケブシ、コウライブシ、ヤマトリカブト、ヤサカブシなどが含まれます。

カワチブシは、花柄と上萼片が無毛であることが特徴です。ウゼントリカブトとオンタケブシは花柄と上萼片に開出毛と腺毛が生え、コウライブシは花柄と上萼片に開出毛と腺毛が生え、上萼片の嘴が長いです。ヤマトリカブトとその亜種群、ヤサカブシは、花柄と上萼片に屈毛が生えることで区別できます。

注意： カワチブシは有毒植物であり、摂取すると中毒症状を引き起こす可能性があります。絶対に食べないでください。

日本のレッドデータ検索システム
カワチブシ（南河内の自然情報） – 大阪府

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