ターディスへの旅

ドクター・フー 第7シリーズ第10話 「ターディスへの旅」：解説記事

「ターディスへの旅」(原題:Journey to the Centre of the TARDIS)は、2013年4月27日にBBC Oneで初放送された、イギリスのSFドラマ『ドクター・フー』第7シリーズの10話目です。脚本はスティーヴン・トンプソン、監督はマット・キングが務めました。

物語の概要

11代目ドクター(マット・スミス)とコンパニオンのクララ・オズワルド(ジェナ・ルイーズ・コールマン)は、故障したターディス内部に取り残されます。ドクターは、ターディスの故障の原因となった引き揚げ作業員3兄弟(アシュリー・ウォルターズ、マーク・オリバー、ジャベル・ホール)にクララの救出を依頼。彼らは、損傷したターディスの奥深くで、クララを探す旅に出発します。しかし、その過程で彼らは、まるで意思を持つかのごとく、生きたターディスそのものに翻弄されていくことになるのです。

製作秘話

このエピソードの着想は、番組の製作総指揮者であったスティーヴン・モファットによるものです。彼は、1978年のエピソード「タイムの侵略」で未完成に終わった、ターディス内部の探検というアイデアを、脚本家のスティーヴン・トンプソンに託しました。「タイムの侵略」は予算上の制約から、ターディスの内部セットを制作できず、ロケ地を病院に変更せざるを得なかったという経緯があります。モファットはこの未完成のアイデアをずっと悔やんでおり、今回のエピソードでようやく実現することとなったのです。

トンプソンは、数学にも造詣が深く、エピソード内の多次元工学にも独自のアイデアを反映させました。当初の脚本では、遠足中のターディスが何らかの妨害を受けるという展開が予定されていましたが、モファットの提案により、引き揚げ作業員との出会いに変更されています。また、タイトルである「ターディスへの旅」は、ジュール・ヴェルヌの『地底旅行』へのオマージュであり、ターディスがタイトルに含まれた初めてのエピソードでもあります。

撮影は主にRoath Lock studiosで行われ、外部のシーンはニューポートの倉庫などで撮影されました。クララ役のジェナ・ルイーズ・コールマンの体調不良など、撮影には様々な困難もあったようです。ゲスト出演者であるアシュリー・ウォルターズは、撮影初日に自身の衣装を着た写真を、宇宙空間を連想させる言葉と共にツイートしてしまったことから、スタッフとの間で小さな騒動が起きたというエピソードも残されています。

放送と視聴者の反応

イギリスでの初回放送は2013年4月27日で、視聴者数は約650万人を記録しました。BBC iPlayerでの再生回数も高く、高い人気を誇りました。一方、日本では放送されていませんでしたが、Huluで配信が開始されています。

批評家の反応

批評家の評価は賛否両論です。肯定的なレビューでは、大胆な展開、不気味な雰囲気、俳優陣の演技、そして過去のエピソードに比べて向上した制作クオリティなどが称賛されています。しかし、一方で、プロットの制約、脚本の弱さ、登場人物の薄さ、安易な解決策、過去のエピソードとの矛盾、などといった批判も上がっています。特に、引き揚げ作業員3兄弟の描写については、演技力やキャラクターの造形について厳しい意見が多いようです。全体的に見ると、興味深い設定とアイデアはあるものの、脚本や演出上の課題が指摘された作品と言えるでしょう。様々な批評家の意見を総合すると、このエピソードは、魅力的な要素と惜しい点の両方を併せ持った、複雑な評価を受ける作品であったと言えるでしょう。

まとめ

「ターディスへの旅」は、ターディスという設定を最大限に活かした、冒険活劇です。しかし、過去のエピソードへのオマージュや、制作過程における様々なエピソードなども含め、多角的に評価する必要があるでしょう。様々な批評家の意見を総合すると、このエピソードは、魅力的な要素と惜しい点の両方を併せ持った、複雑な評価を受ける作品であったと言えるでしょう。

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