ターニャ・サヴィチェワ

タチアナ・ニコライェーヴナ・サヴィチェワの物語

タチアナ・ニコライェーヴナ・サヴィチェワ（通称ターニャ）は、1930年1月25日に生まれ、1944年7月1日に亡くなったロシアの少女です。彼女はレニングラード包囲戦中に、自身の日常や家族の状況を記録した日記を残しました。この日記は、彼女の苦悩と家族愛を物語る貴重な記録として知られています。

生い立ち

ターニャはニコライ・ロディオノヴィッチ・サヴィチェフとマリーヤ・イグナチェーヴナ・サヴィチェワの末っ子でした。彼女が6歳の時、父親は亡くなり、母親と二男三女という家族の生活は厳しさを増していきます。1941年の夏、彼らは田舎での休暇を予定していましたが、6月22日に始まった独ソ戦の影響で、その計画は崩れ去ることとなりました。

ターニャ以外の家族はレニングラードに残ることを決め、各自が軍へ協力する活動に身を投じました。母親のマリーヤは軍服の縫製を行い、兄のリョーカは造船所で働き、姉のジェーニャは弾薬工場に勤務していました。ターニャもまた、11歳ながら塹壕を掘ったり、爆弾を運んだりするなど、戦争への参加を余儀なくされていました。

しかし、ある日、姉のニーナが仕事に出て帰らぬまま消息を絶ちます。家族は彼女が死んだと考え、絶望に暮れました。

ターニャの日記

ニーナの失踪から数日後、母親のマリーヤは、ターニャに姉の使っていた小さな手帳を手渡しました。それが『ターニャの日記』として名を馳せることになります。ターニャは元々、日々の出来事を記録するための分厚いノートを持っていましたが、冬に燃料が尽きてしまい、それをストーブにくべることにしてしまいます。代わりに、手帳を日記として用いることにしたのです。

日記の最初の記録は、12月28日に亡くなった姉のジェーニャの死から始まります。ジェーニャは長時間の過酷な工場勤務と献血を繰り返しており、身体が弱かったためにそのまま命を落としてしまったのです。以降の日記には、家族の死という厳しい現実が淡々と記されていきます。

その後の人生

1942年8月、レニングラードから避難した140人の子どもたちがクラスヌイ・ボール村に送られました。ターニャはその中の一人で、教師のアナスタシヤ・カルポワが彼女の兄ミハイルに手紙を書いたことが記録に残っています。手紙には「ターニャは生きていますが、非常に具合が悪いです」とありました。その後、ターニャは1944年5月に入院し、わずか1か月後に亡くなる運命を辿ります。彼女だけが、クラスヌイ・ボール村に避難した子どもたちの中で命を落としたのです。

ターニャの兄や妹たちは戦後にレニングラードに戻り、ターニャの残した手帳は重要な証拠としてニュルンベルク裁判に提出されました。現在では、日記はレニングラード歴史博物館で保管され、そのコピーがピスカリョフ記念墓地に展示されています。ターニャは、戦争の中で失われた命の象徴として、今も多くの人々に語り継がれています。

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