ターボ (アルバム)

ヘヴィメタルシーンの最前線を走り続ける伝説的なバンド、ジューダス・プリーストが1986年に発表した通算10枚目のスタジオ・アルバムが『ターボ』（Turbo）です。この作品は、当時のバンドにとって大きな音楽的変化を示したことで知られ、リリースから長年にわたりファンの間で様々な議論を呼んでいます。

本作の最も顕著な特徴は、それまでのジューダス・プリーストのサウンドとは一線を画す、大胆な電子楽器、特にギターシンセサイザーの導入です。これにより、楽曲全体のサウンドは、従来の生々しいヘヴィメタル特有の響きから、より人工的でメタリックな質感へと変化しました。また、収録曲の多くにキャッチーでポップなメロディや構成が採用されており、バンドの新たな音楽的側面が強調されています。これらの試みは、ヘヴィメタル純粋主義者や古くからのファンからは批判的な意見も多く、バンドのキャリアの中でも「問題作」として扱われることが少なくありませんでした。しかし、一方で新たなサウンドを評価する声もあり、本作は良くも悪くもジューダス・プリーストのキャリアにおける転換点の一つと見なされています。

商業的な面では、母国イギリスではチャート最高位33位に留まったものの、アメリカ市場では大きな成功を収めました。特にBillboard 200チャートでは、このアルバムは前作に引き続きトップ20入りを果たし、バンドにとって3作連続となる快挙を達成しています。これは、従来のファン層に加え、新たなサウンドによって獲得したリスナーの存在を示唆する結果と言えるでしょう。

『ターボ』のリリースに伴い、バンドは「Fuel For Life Tour」と銘打たれたワールドツアーを敢行しました。このツアーの模様は、その翌年である1987年にライブ・アルバム『プリースト…ライヴ!』（Priest... Live!）として発表され、当時のバンドの熱狂的なパフォーマンスを記録した公式音源として、本作と共に重要な位置を占めています。

また、本作のオープニングトラックであり、印象的なリフとタイトルを持つ楽曲「ターボ・ラヴァー」は、リリース後も様々な形で親しまれました。例えば、2001年に発売された人気ゲームソフト『グランツーリスモ3 A-spec』のアメリカ版では、ゲーム内のBGMとして採用され、幅広い層に聴かれる機会を得ました。

アルバム『ターボ』には、ボーナス・トラックを除くと以下の9曲が収録されています。これらの楽曲は全て、バンドの中心的なソングライターであるロブ・ハルフォード、K. K. ダウニング、グレン・ティプトンの3人によって共作されています。

ターボ・ラヴァー (Turbo Lover) - 5:32
ロックド・イン (Locked in) - 4:19
プライヴェート・プロパティ (Private Property) - 4:29
ペアレンタル・ガイダンス (Parental Guidance) - 3:26
野獣のロックン・ロール (Rock You All Around the World) - 3:36
孤独の叫び (Out in the Cold) - 6:27
狂乱の夜 (Wild Nights, Hot & Crazy Days) - 4:39
愛に飢えて (Hot for Love) - 4:11
レックレス (Reckless) - 4:18

なお、2001年にリリースされたリマスター版CDには、以下の2曲がボーナス・トラックとして追加収録されています。

オール・ファイアード・アップ (All Fired Up) - 4:45
ロックド・イン (Locked in (Live)) - 4:25

本作の制作に参加したミュージシャンは以下の5名です。

ロブ・ハルフォード：ヴォーカル
K. K. ダウニング：リードギター、ギターシンセサイザー
グレン・ティプトン：リードギター、ギターシンセサイザー
イアン・ヒル：ベース
デイヴ・ホーランド：ドラムス

また、「ターボ・ラヴァー」は他のアーティストによるカバーも存在します。例えば、シンガーのロニー・ロメロは、2023年に発表したカバー・アルバム『Raised On Heavy Radio』の中でこの楽曲を取り上げています。

『ターボ』は、ジューダス・プリーストの長いキャリアの中でも特に実験的で、賛否が分かれる作品ではありますが、バンドが常に変化を恐れず、新たなサウンドを追求してきた証として、その重要性は揺るぎないものです。

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