ギターシンセサイザー

ギターシンセサイザー

ギターシンセサイザーは、ギターの演奏をシンセサイザーの音源として利用する楽器です。広義にはギターの音を加工してシンセサイザーのような音色を出す装置全般を指し、狭義にはギターをシンセサイザーのコントローラーとして使用する方式を指します。

構造

代表的なギターシンセサイザーの構造は以下の通りです。

1. 6弦独立ピックアップ (Hexa Divided Pickup): 各弦の振動を個別に捉え、和音の入力を避けるための特殊なピックアップを使用します。
2. ヘッドアンプ: ピックアップからの信号を増幅します。
3. エンベロープ・フォロワー (EF): 入力信号のエンベロープを抽出します。
4. コンパレーター: 信号を整形します。
5. 周波数・電圧変換回路 (FVC): 信号の周波数を電圧に変換します。この回路は、矩形波を微分したスパイク波でコンデンサーを充電し、入力周波数に比例した電圧を出力します。
6. VCA/VCF: EFからのエンベロープ信号電圧で、VCA（電圧制御アンプ）やVCF（電圧制御フィルター）をコントロールします。
7. エンベロープ・ジェネレーター (EG): ENV信号を元にGATE信号を生成し、EGやサンプル&ホールド（S/H）をコントロールします。ただし、ギター演奏のニュアンスを重視する場合は省略されることもあります。

実用化の歴史

ギターシンセサイザーは、弦振動という不安定な物理現象をデータに変換するため、実用化が困難でした。安定した演奏が可能な製品が登場したのは、シンセサイザーにMIDIやマイコンシステムが導入されてからです。

1977年: ローランドがGR-500モノフォニック・ギターシンセサイザーを発表。これは、MIDI導入以前に発表された最初の実用的なギターシンセサイザーです。専用のギター・コントローラーとシンセサイザー本体で構成され、シンセ音源はモノフォニックですが、各弦に個別のファズ・エフェクト回路が搭載されていました。アープ社のAVATARも同様のシステム構成でしたが、演奏性は必ずしも良好ではありませんでした。
1980年代初頭: ローランドがGR-300を発表。これは初の実用的なポリフォニック・ギターシンセであり、良好な演奏性から多くのミュージシャンに支持されました。GR-500と同様のシステム構成で、6弦独立のファズ、FVC、VCO、ENVコントロールされるVCA、VCFなどを搭載していました。
* その後: GR-700を経て、MIDIとデジタル音源が統合されたGR-1シリーズが発売され、本格的なギターシンセサイザーの時代が始まりました。

MIDI以降のギターシンセが持つ問題

デジタル化以降のギターシンセサイザーは安定性が向上し、EGを積極的にコントロールすることで、ギターでもピアノのようなタッチで演奏できるようになりました。しかし、FVCの動作原理はアナログ時代から変わっておらず、周波数が低くなるにつれてセトリングタイムが増大するという物理的な問題は解決されていません。

この遅れを解消するために、ピックが弦に接触する際のスクラッチ音を分析したり、ネック内に磁気スイッチを仕込んで演奏ポジション情報を取得したり、超音波で演奏ポジション情報を取得したりするなどの研究が行われていますが、まだ決定的な製品は登場していません。また、専用音源の場合は比較的反応が速いのですが、MIDI経由で外部音源をコントロールした場合には、さらに遅れが出てしまうようです。

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