タール湖

フィリピン・ルソン島のタール火山とタール湖：息を呑む絶景と潜む脅威

フィリピン、ルソン島に位置するタール湖は、周囲約82.5km、面積約234.2km²の広大なカルデラ湖です。首都マニラから南へ約60km、美しい避暑地として知られるタガイタイを擁する標高約600mの外輪山に囲まれたこの湖は、実は活火山であるタール火山のカルデラに形成されています。

タール火山は、20km×25kmの広大なカルデラの中に、タール湖という名のカルデラ湖を抱えています。そしてその湖の中央には、直径5km～8kmの火山島がそびえ立ちます。湖面から約300mの高さに達するこの火山島は、中央火口丘であり、その中心には直径約2kmの火口が確認されています。島内には、47もの火口や火山丘が存在し、その多様な地質学的特徴は火山活動の活発さを物語っています。

歴史を紐解くと、タール火山はスペイン植民地時代初期の1572年から1977年までの間に33回の噴火を記録しています。特に、1911年1月30日に発生した大噴火は、凄まじい爆風により火山島住民の多くが犠牲となり、1334名もの死者を出しました。1965年には火山島の西岸でマグマ水蒸気噴火が発生、ベース・サージ現象が世界で初めて記録され、200名以上の死者が出たという記録も残されています。1977年には水蒸気爆発が発生、そして2010年には有感地震が発生し、警戒レベルが引き上げられ、島民全員が避難を余儀なくされました。近年では2020年1月に、実に43年ぶりの噴火が発生しています。現在、火山島は国立公園に指定されており、居住は禁止されています。

タール火山へのアクセスは、マニラからタクシーを利用すれば約2時間ほどです。タガイタイから湖岸まで行き、ボートをチャーターすれば約30分で火山島へ渡ることができます。島内では、徒歩または馬を利用して約30分かけて山頂まで登ることも可能です。雄大な自然と活火山の迫力、そして歴史的噴火の痕跡を目の当たりにすることができるでしょう。

しかしながら、その美しい景観の裏には、常に噴火の危険性が潜んでいます。活火山であることを忘れず、最新の火山情報を確認し、安全に配慮した上で、この息を呑むような絶景を堪能しましょう。タール湖とタール火山は、自然の驚異と畏怖を同時に感じさせる、忘れがたい体験を提供してくれるでしょう。

関連情報
カルデラ
火山、火山の一覧
歴史的な津波の一覧
Smithsonian Institution: Global Volcanism Program (Taal)
* 国際湖沼環境委員会 (LAKE TAAL)

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