ダイバリオン

ダイバリオン（Dibaryon）は、理論上存在が提唱されている、6つのクォークから構成される複合粒子です。通常のバリオンが3つのクォークで構成されるのに対し、ダイバリオンはより多くのクォークを含むため、その性質や振る舞いには大きな関心が寄せられています。

1977年、ロバート・ジャッフェによって、udsハイペロン2つが結合したudsudsというクォーク構成を持つHダイバリオンの存在が初めて指摘されました。Hダイバリオンは、一度形成されると比較的安定な状態を保つと予測されています。この安定性に着目し、ダイバリオンの崩壊や相互作用を検出するための実験が数多く提案されてきました。1990年代には、ダイバリオン崩壊の候補となる現象がいくつか観測されましたが、その存在を決定づけるまでには至っていません。

ストレンジネスを持つハイペロンやHダイバリオンは、中性子星の内部で生成されると考えられています。理論的なモデルによれば、中性子星内部の極めて高い密度と圧力の下で、中性子の大きな破片がハイペロンへと変化し、中性子星がブラックホールへと崩壊する初期段階で重合してダイバリオンを形成するとされています。

興味深いことに、これらのダイバリオンは、崩壊の過程でクォークグルーオンプラズマ、または未知の物質状態へと変化すると予測されています。クォークグルーオンプラズマは、クォークとグルーオンが自由に動き回る高温・高密度の状態であり、宇宙初期の状態を再現するものとして知られています。ダイバリオンの研究は、高密度物質の状態やクォークの閉じ込め機構の理解を深める上で重要な手がかりとなると期待されています。

ダイバリオンに関する研究は、理論的な予測と実験的な検証が相互に影響し合いながら進展しています。今後の実験によってダイバリオンの存在が確認され、その性質が詳細に解明されることで、素粒子物理学や宇宙物理学における新たな知見が得られることが期待されます。

参考文献

Perhaps a Stable Dihyperon
Ultrahigh-energy cosmic rays and stable H dibaryon
Upper limits for a narrow dibaryon in pp collisions at 200 and 310 MeV
THE E896 EXPERIMENT SEARCH FOR THE H-DIBARYON (PDF)
Can Doubly Strange Dibaryon Resonances be Discovered at RHIC?
SEARCH FOR THE WEAK DECAY OF AN H DIBARYON "Our search has yielded two candidate events..."
* Neutron Star Constraints on the H Dibaryon

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