ダイバータレス超音速インレット

ダイバータレス超音速インレット (DSI) について

ダイバータレス超音速インレット（Diverterless Supersonic Inlet、略称DSI）とは、特に軍用機のエアインテークに用いられる最新の技術を指します。この設計は、従来型のエアインテークに見られる境界層隔壁やスプリッターベーンが存在しないため、ダイバータレスと名付けられました。

DSIの基本的な原理

通常、航空機の表面では周囲の空気とは異なり、遅くエネルギーの少ない空気（境界層空気流）が流れています。この境界層を吸い込んでしまうことは、エンジンの効率を低下させる要因となります。そこで、従来型のエアインテークでは空気の流れを管理するための隔壁を設けていましたが、DSIでは異なるアプローチを採用しています。この新しい方式では、エアインテークの前方にあるふくらみが境界層空気を排出し、圧縮して流れを切り裂くことで、効率的に空気を取り入れます。

ステルス性の向上

さらに、DSIの設計には他の利点も含まれています。この回転構造は、エアインテーク内にあるファンブレードを隠す役割も果たしており、電波の侵入や反射を抑制します。その結果、機体のレーダー反射断面積（RCS）が減少し、ステルス性の向上につながります。この特性から、F-35などの一部のステルス機では、DSIが非常に効果的な設計手法として採用されています。

整備性と信頼性

DSI方式は、動く部分がないため、整備の簡素化や信頼性の向上が期待されます。特に、可変式インテークやショックコーン技術と比較して、構造が簡素で軽量なため、機体の総重量を大幅に軽減することが可能です。実際にF-35では、従来型インテークに比べて約30%の重量削減が実現されています。ただし、DSIは固定式インテークの一部であるため、騒音が増加するというデメリットも存在します。

DSIの歴史

ダイバータレス超音速インレットについての研究は1990年代初頭からロッキード・マーティンによって開始されました。1996年には、F-16 Block 30のエアインテークをDSIに改造したF-16 DSIが試験飛行を行い、この設計が従来の性能を保ちながら最大マッハ2.0の速度での飛行が可能であることが証明されました。この実験により、亜音速域での出力もわずかに向上したことがわかり、この知見は後のF-35設計に活かされています。

DSIを搭載した機体

初めてDSIを実戦配備したのは中国で、パキスタンとの共同開発により、FC-1の試作4号機がDSIを採用しました。これが量産型の基本形状となり、中国はその技術をJ-10BやJ-20/J-31といった他の機体にも応用しています。

主な搭載機

• - F-16 DSI
• - F-35
• - J-10B
• - FC-1
• - J-20
• - J-31
• - JL-9

このように、ダイバータレス超音速インレットは、軍用機の設計において重要な要素であり、性能の向上やステルス性の強化に寄与しています。今後もこの技術の進化が期待されます。

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