ダイモスの太陽面通過

ダイモスの太陽面通過

現象の概要

ダイモスの太陽面通過とは、火星から観測した際に、その衛星であるダイモスが太陽と観測者の間に位置し、太陽の表面の一部を遮ることで起こる天文現象を指します。地球で起こる月の太陽面通過、すなわち日食に似ていますが、衛星の大きさと太陽の見かけ上の大きさの比率が異なるため、太陽が完全に隠される皆既日食は発生しません。この現象は、ダイモスによる部分日食として理解されることもあります。

火星の空において、太陽の前をダイモスが横切る際、その姿は黒い円形のシルエットとして視認されます。ダイモスは火星の二つの衛星の一つであり、比較的内側の軌道を公転しています。

現象の特徴と継続時間

ダイモスが火星の周りを公転する周期は、およそ30.3時間と比較的高速です。このため、ダイモスが太陽面を通過する際の移動速度も速く、火星から観測した場合の太陽面通過の継続時間は非常に短いのが特徴です。通常、ダイモスの太陽面通過は始まりから終わりまでわずか1分から2分程度で完了します。この短さは、火星のもう一つの衛星であるフォボスが引き起こす太陽面通過（こちらは数分から数十秒程度）と比べても短い場合が多いです。

ダイモスの見かけの大きさ

火星から見たダイモスの見かけ上の直径（視直径）は、太陽のそれと比較して非常に小さいことが知られています。具体的には、太陽の視直径の約10分の1程度しかありません。これは、ダイモスが太陽全体を覆い隠すことができない理由の一つです。

また、地球から観測される金星の太陽面通過における金星の視直径と比較しても、火星におけるダイモスの視直径は約2.5倍程度にしかなりません。このことから、火星からの視点では、ダイモスは太陽表面を横切る小さな黒い円盤として見えます。

観測事例

ダイモスの太陽面通過は、地上からの観測が困難な火星表面での天文現象ですが、火星探査機によってその姿が捉えられています。特に、NASAの火星探査ミッションであるマーズ・エクスプロレーション・ローバー（MER）の二つのローバー、オポチュニティとスピリットは、2004年にこの珍しい現象を観測し、貴重な画像を地球へ送信しました。

オポチュニティは、2004年3月4日にダイモスの太陽面通過の撮影に成功しました。この時の記録には、協定世界時（UTC）および撮影地点における地方太陽時の時刻情報が含まれています。
スピリットもまた、ダイモスの太陽面通過を観測しています。スピリットによる観測は、2004年3月9日と2004年3月13日に行われました。3月9日の観測記録には協定世界時が、3月13日の観測記録には協定世界時と地方太陽時の両方が含まれています。

これらの観測は、火星の衛星の軌道や太陽系の天体位置関係を理解する上で重要なデータを提供しました。

関連項目

• - 太陽面通過
• - フォボスの太陽面通過

外部リンク

* JPL Solar System Simulator - NASAによる太陽系シミュレータ（英語）

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