ダウニング街10番地

ダウニング街10番地：英国首相官邸のすべて

ロンドンのウェストミンスターに位置するダウニング街10番地は、単なる住所ではなく、英国首相の象徴的存在です。300年以上にわたる歴史と、約100室もの広大な空間を持つこの建物は、単なる執務室にとどまらず、首相とその家族の住居、そして外交の舞台として機能しています。

歴史と建築

1732年、初代首相ロバート・ウォルポールが第一大蔵卿官邸として使用を開始したことを起源とし、以来、幾多の首相がここで歴史を刻んできました。当初は3棟の建物を改築して現在の姿となり、その歴史は幾多の変遷を経験しています。維持費用の高さから取り壊しの危機に瀕したこともありましたが、今日では「国家遺産の中でも最も貴重なものの一つ」として高く評価されています。

建物の外観は一見シンプルですが、その内部は非常に複雑です。首相の執務室や会議室、応接室に加え、家族のための居住空間、食堂、そして地階にはキッチンも備えています。裏庭には庭園とテラスがあり、セント・ジェームズ・パークに隣接する好立地も魅力の一つです。玄関扉に「10」の番号だけが記されているのは、官邸が国有資産であるため、個人の名前は表示しないという慣習によるものといわれています。これは、イギリスの家屋では番地や住居番号のみを表示するのが一般的であるという事実とも合致しています。

歴代首相とダウニング街10番地

ダウニング街10番地は、単なる住居や執務室を超えて、イギリス政治の歴史そのものを体現しています。歴代の首相たちがここで重要な決定を下し、国際的な首脳たちとの会談を重ねてきました。その歴史は、英国の歴史そのものといえるでしょう。ウィンストン・チャーチルやマーガレット・サッチャーといった著名な首相も、この場所で重要な役割を果たしました。彼らの足跡は、建物のあちこちに残されているかもしれません。

ダウニング街周辺

ダウニング街は、他の重要な政府機関にも隣接しています。9番地はかつて枢密院司法委員会が、11番地は財務大臣が、12番地は院内幹事長がそれぞれ公邸として使用していました。サッチャー政権以前は、ダウニング街は一般車両の通行が許されていましたが、1989年以降はセキュリティ強化のため、関係者以外立ち入り禁止となっています。

ネズミ捕獲長：公務員ネコ

ダウニング街10番地には、ユニークな「職員」がいます。それは「首相官邸ネズミ捕獲長」という肩書を持つネコです。1500年代初期からネズミ駆除のために飼われてきたネコは、1924年からは正式に「雇用」され、公務員として認められています。歴代ネズミ捕獲長には、ハンフリーやウィルバーフォースといった有名なネコもいました。現在も、ラリーというネコがその職務に就いています。

まとめ

ダウニング街10番地は、単なる建物ではなく、英国政治の中枢であり、英国の歴史を体現する場所です。その歴史、建築、そしてそこに暮らすネコまで、あらゆる要素が英国のアイデンティティを象徴しています。これからも、英国首相官邸として、そして英国政治の中心として、その役割を果たし続けるでしょう。

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