ダウンテンポ

ダウンテンポとは

ダウンテンポ（Downtempo）は、その名の通り、テンポを落とした、ゆったりとしたビートが特徴の電子音楽のジャンルです。アンビエント・ミュージックと密接な関係にありながら、リズムに重点が置かれている点が特徴です。ダンスミュージックよりも遅いビートで、心地よい雰囲気のサウンドが特徴的で、チルアウト・クラブやDJセットの合間など、リラックスした空間を演出するのに適しています。

ダウンテンポの特徴

ダウンテンポの音楽は、以下のような特徴によって定義されます。

雰囲気のあるサウンド: キャッチーなメロディーやリフよりも、サウンドの重なりや全体の雰囲気を重視します。
遅いビート: 一般的に、BPM90前後の遅いビートが用いられます。
メロディアスな要素: シンプルなアンビエント・ミュージックよりも、メロディックなフレーズが取り入れられます。

ダウンテンポは、その幅広いジャンルの中に、トリップ・ホップ、アンビエント・ハウス、チルウェイヴ、サイビエント、ローファイ・ヒップホップなど、多様なサブジャンルを含んでいます。

ダウンテンポの歴史

ダウンテンポは、1980年代後半にイギリスのブリストルで生まれた「ブリストル・サウンド」がルーツとされています。このムーブメントは、ヒップホップと電子音楽をスローでサイケデリックに融合させた「トリップ・ホップ」というジャンルを生み出し、マッシヴ・アタック、ポーティスヘッド、トリッキーといったアーティストを輩出しました。

1990年代に入ると、ダウンテンポは世界的に認知されるようになります。クラブのチルアウト・ルームや電子音楽イベントで、リラックスできる音楽として演奏されるようになりました。ナイトメアズ・オン・ワックスなどのアーティストは、ダブ・レゲエやヒップホップの要素を取り入れ、初期のダウンテンポ・エレクトロニカを牽引しました。また、イビサ島では、日の出の時間に合わせて、ゆっくりとしたリズムと穏やかな電子音楽で雰囲気を演出する動きも広まりました。

1990年代後半には、アコースティックなサウンドとエレクトロニックなスタイルを組み合わせたメロディアスなインストゥルメンタル・エレクトロニカが登場し、これらがダウンテンポという包括的な名称で呼ばれるようになりました。クルーダー&ドルフマイスターは、1970年代のソウルジャズの影響を受けたポップス、ヒップホップ、ドラムンベースのトラックをダウンテンポにリミックスすることで、このスタイルを広めました。フィラ・ブラジリアは、ダウンテンポ、エレクトロニカ、アンビエントテクノのアルバムをリリースし、シーンを牽引しました。シーヴェリー・コーポレーションは、ブラジルのサウンドにジャマイカのダブやレゲエの要素を組み合わせることで、独自のサウンドを確立しました。

2010年代には、メロウなビート、ビンテージシンセサイザー、ローファイメロディーを特徴とする「ダウンテンポ・ポップ」が登場し、チルウェイヴ、グローファイ、ヒプナゴジック・ポップなどの音楽スタイルも内包しました。また、YouTubeを中心に「ローファイ・ヒップホップ」や「チルホップ」といった、新たなダウンテンポ・ミュージックも人気を集めています。

代表的なアーティスト

ダウンテンポの代表的なアーティストとしては、以下のような名前が挙げられます。

マッシヴ・アタック
ポーティスヘッド
トリッキー
クルーダー&ドルフマイスター
フィラ・ブラジリア
シーヴェリー・コーポレーション
ボーズ・オブ・カナダ
ニコラス・ジャー
ボノボ
* ナイトメアズ・オン・ワックス

まとめ

ダウンテンポは、リラックスした雰囲気と心地よいリズムが特徴の電子音楽ジャンルです。その歴史は深く、多様なサブジャンルを生み出しながら、常に新しい音楽的表現を追求し続けています。チルアウトやリラックスしたい時に最適な音楽として、多くの人々に愛されています。

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