ダゲレオタイプ

ダゲレオタイプ

ダゲレオタイプは、フランスのルイ・ジャック・マンデ・ダゲールによって発明された、世界初の実用的な写真撮影技法です。1839年8月19日にフランス学士院で発表され、以後約20年間にわたり広く普及しました。この技法では、銀メッキされた銅板を使用し、感光材料として利用します。そのため、日本語では銀板写真とも称されています。また、この技法を用いて作られた最初の写真用カメラは「ジルー・ダゲレオタイプ」と呼ばれるものです。

特徴

ダゲレオタイプの最大の特長は、ポジティブ画像を直接的に生成する点です。これは他の写真技術、例えばネガティブ画像を取得し、そこからポジティブ画像をプリントする方式とは異なります。ダゲレオタイプでは、銀板上に定着したポジティブ画像がそのまま鑑賞されるため、一度撮影されると同じ画像が再現されることはありません。さらに、感光面からの鑑賞により、画像は左右が反転して表示されます。

この技術にはいくつかの欠点も存在し、一つは像が固定された銀板が接触によって壊れやすいため、保護が必要なことです。初期のジルー・ダゲレオタイプカメラは感度が低く、露光時間は日中でも10～20分かかるため、肖像写真としては実用的ではありませんでした。しかし、1840年代初頭に明るいレンズや改良された感光材料のおかげで、露光時間が1～2分、最短で数秒にまで短縮されました。

歴史

ダゲレオタイプの発明には、18世紀末から続くさまざまな画像固定の試みが関連しています。最初の成功例としては、トマス・ウェッジウッドが1802年に硝酸銀を用いた方法を発表しましたが、彼は画像を定着させることには至りませんでした。ダゲレオタイプの直接的な前身となる技術は、ニセフォール・ニエプスが1824年に発表したヘリオグラフィーです。この技術は非常に長い露光時間が必要であり、商業利用には適していませんでした。

ダゲールは、1829年にニエプスと共同研究を開始し、その後、技術の詳細を学びます。ダゲレオタイプの技術はニエプスからの影響を受けていますが、独自の改良を加えることで革新を遂げました。利用される材料や現像プロセスの手法など、多くの要素がヘリオグラフィーから引き継がれています。

ダゲレオタイプの公にされたのは1839年8月19日、フランス学士院での講演においてです。この発表により、ダゲレオタイプは急速に普及し、ヨーロッパやアメリカでも多くの人々に受け入れられていきました。ダゲレオタイプは高精細な画像を提供し、特許を買い取ったフランス政府の支援を受けることで、誰もが利用できる技術へと成長しました。

技術的原理

ダゲレオタイプの製作は、銀メッキされた銅板の準備から始まります。まず、鏡面に磨き上げた銅板をヨウ素蒸気にさらしてヨウ化銀の膜を形成し、その後は日光を避けながらカメラに取り付けます。この銀板に光を当て、潜像を記録します。初期の技術では露光時間が非常に長く、10～20分かかりましたが、改良が進むことで数秒へと短縮されました。

その後、現像のプロセスとして、水[[銀]]蒸気にさらして潜像を目に見える形に変える方法が取られます。銀イオンと水[[銀]]の反応によって画像が浮かび上がります。最後に、感光が進むのを防ぐために、食塩水で定着を行いますが、後にチオ硫酸ナトリウムの使用が一般化しました。

市販カメラと現在の状況

最初の市販ダゲレオタイプカメラである「ジルー・ダゲレオタイプ」は、シャルル・シャヴァリエ製作のレンズを使用し、非常に長い露光時間が求められました。その設計は現代の一部の博物館で見ることができ、今日でも新井卓などの写真家によってこの技法が引き継がれています。

ダゲレオタイプは、単なる技術の歴史だけでなく、写真というメディアの可能性を広げるための重要なステップとなった技法として、現代の写真の基盤を築いたと言えます。

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