ヨウ素

ヨウ素の概要

ヨウ素（いおうそ、英:Iodine）は、周期表において原子番号53、原子量126.9の元素で、元素記号はIで表されます。また、二原子分子としてI2とも表記されます。この元素はハロゲンに分類され、常温においては固体で、紫黒色の結晶を形成します。ヨウ素は昇華性を持ち、温度が上昇すると気体になります。水にはわずかに溶けるものの、エタノールやヨウ化カリウムの水溶液にはよく溶解します。また、ヨウ素は日本の法律において医薬用外劇物に指定されています。

名称の由来

ヨウ素の名前は、スミレ色がかった気体の色に由来しています。そのため、ギリシャ語の「ιώδης（いおーです）」が起源とされ、フランス語で「iode」と名付けられました。英語では「iodine」と呼ばれています。

発見の歴史

ヨウ素は、1811年にベルナール・クールトアによって海藻灰から発見されました。1813年に彼の同僚たちがこの発見を発表し、その後の研究により元素であると確認されました。

地球上での分布

現在、推定されるヨウ素の総量は約8.7×10^12トンで、その約70%は海底堆積物に存在しています。初期の地球では遊離酸素の増加前にI-の形態で存在し、その後、酸素濃度の上昇に伴い有機ヨウ素やヨウ素酸イオン（IO3-）として変化しました。海洋中には揮発性の有機ヨウ素も広く分布していますが、関与する微生物についての詳細は未解明です。

用途

分析化学

ヨウ素は分析化学においても広く使用されています。特に、ヨウ素溶液にデンプンを加えると藍色を呈する反応が起こり、これを利用したヨウ素滴定（ヨードメトリー）が行われます。この反応は、デンプンの定性的な検出にも役立ちます。また、ヨウ化カリウムデンプン紙は酸化剤の検出に用いることができます。

消毒薬

消毒薬としても利用されるヨウ素は、アルコール溶液と混合することでヨードチンキを生成し、外用消毒薬として使用されます。他にも、ポビドンヨードなどが知名度があります。

生体における役割

ヨウ素は甲状腺ホルモンの合成に必要不可欠な元素であり、体内に吸収されると甲状腺に蓄積されます。ヨウ素の不足はヨード欠乏症を引き起こし、過剰な摂取は甲状腺の異常を招く可能性があります。

日本における摂取状況

日本では海藻類がヨウ素を濃縮するため、海藻を通じて日常的に摂取されています。厚生労働省の指標によれば、成人の推奨摂取量は130 µg/日です。しかし、特に妊婦や授乳婦にはさらなる摂取が推奨されています。海藻の濃縮作用により、特定の食事習慣がヨウ素の過剰摂取に繋がることもあります。

国外の状況

アメリカやスイス、カナダなどでは、ヨウ素を含む塩が義務化されており、その結果ヨード欠乏症が減少しています。しかしオーストラリアでは、日本からの高濃度ヨウ素の輸入に伴う健康被害の報告もあり、規制が必要とされています。

放射性ヨウ素

放射性同位体133Iは核分裂の生成物であり、放射能汚染の危険が伴います。特に、チェルノブイリ事故の際に放出された131Iは、甲状腺に蓄積して甲状腺がんを引き起こす原因となりました。そのため、安心安全のために安定ヨウ素剤の服用が推奨されています。

資源と生産

ヨウ素は海水中に微量存在し、その生産は主にチリや日本で行われています。日本では千葉県の天然ガス鉱床からの湧水が主な供給源であり、近年では「千葉ヨウ素資源イノベーションセンター」が設立され、研究が進められています。

おわりに

ヨウ素は多様な特性と用途を持つ重要な元素であり、特に健康や環境においてその役割は不可欠です。今後もその研究と応用が期待されています。

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