ダゲレオタイプの女

ダゲレオタイプの女

『ダゲレオタイプの女』（ダゲレオタイプのおんな）は、2016年に公開されたフランス・ベルギー・日本の共同制作による恋愛ホラー映画です。監督は黒沢清氏が務め、タハール・ラヒム、コンスタンス・ルソー、オリヴィエ・グルメなどが主役を演じています。物語は、伝説の写真技術「ダゲレオタイプ」を背景に、恋愛、自己実現、そして死というテーマが交錯する深い内容となっています。

あらすじ

物語の中心にいる青年ジャン（タハール・ラヒム）は、パリ郊外にある古い屋敷で働く写真家ステファン（オリヴィエ・グルメ）の助手として、彼のもとへやって来ます。ステファンは、娘のマリー（コンスタンス・ルソー）をモデルにして、170年前に開発されたダゲレオタイプの技法を再現しようとしており、マリーはこの撮影法に応じつつも自立を望んでいる若い女性です。ジャンは彼女に心惹かれていくものの、マリーの未来への夢と彼女の現在の状況には微妙な温度差が存在しています。

彼女は植物に魅了され、トゥールーズの植物園からの面接通知に喜びを見せます。なるほど、彼女が自立を夢見ていることが描かれています。一方、ステファンの妻で、かつてダゲレオタイプのモデルとして活躍したドゥーニーズ（ヴァレリ・シビラ）は、屋敷の温室で自ら命を絶った過去を持ち、今も彼の心に暗い影を落としていました。

ある晩、マリーが屋敷の階段から転げ落ちてしまいます。彼女を救おうと急ぐジャン。しかし、不思議なことに途中、後部座席にいる彼女の姿が消えてしまうのです。無事に帰宅すると、そこには普通に迎えるマリーの姿があり、ジャンは慌て混乱します。

ステファンは、娘が死んだと思い、絶望の淵に立たされます。この状況を、ジャンとマリーは利用して、屋敷の土地を手放させようとします。ジャンの巧妙な偽造が試みられるものの、トマ（マリク・ジディ）の鋭い目に捉えられてしまい、計画が崩れてしまいます。その後、ジャンはステファンに秘密を暴露し、彼の悲劇的な選択を導いてしまうのです。

映画は、ジャンとマリーが手を組み、一緒に逃げる場面へと向かいます。途中、即席の結婚指輪を作り、無人の教会で愛を誓い合う二人の姿は、非常に印象的です。しかし、やはり不安定な運命の糸は途切れず、再び悲劇が彼らを待ち受けます。

評価

評価はさまざまで、宇田川幸洋氏は、写真と死の絡み合いが生む不気味さとともに、その展開の中でのジャンの変化が加わることで作品が単調な印象を与えてしまったと述べています。一方で川口敦子氏は、マリーの幻想的な存在感に注目し、また死者との関係を通して描かれる若者の孤独が物語の核を成すことを指摘しました。

上映

この映画は2016年9月にトロント国際映画祭で初公開され、日本では9月15日にプレミア上映が行われ、その後一般公開されました。日本での公開を記念して、特集イベントも開催されたことから、黒沢清という監督の存在が改めて注目されることなりました。彼の独自の視点と演出方法は、多くの世界中の観客に強い印象を与え、話題となっています。

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