ダシマスター

ダシマスター

『ダシマスター』は、脚本家として知られる早川光が原作を、漫画家の松枝尚嗣が作画を担当した日本の料理・グルメ漫画作品です。

連載と作品の背景

本作は、集英社の漫画雑誌『ビジネスジャンプ』にて、2009年20号から2011年21・22合併号まで連載されました。その後、同じく集英社の新雑誌『グランドジャンプ』が創刊されるにあたり、そちらへ移籍。2011年の創刊号から同年15号まで連載が続けられました。

物語の中心となるのは、ダシの扱いにおいて比類なき技量を持つと評判の伝説的な出張料理人です。彼は一風変わった様々な依頼に応え、特別な料理を提供することで、食を通して結ばれる人々の絆や関係性を深く描き出していきます。単なる料理の技術を描くだけでなく、料理が人の心に与える影響や、人情ドラマの側面も持ち合わせています。

物語のあらすじ

主人公は「ダシマスター」として名を馳せる出張料理人、ヤタ・ダイゴ。メディアへの露出を一切避け、一部の限られた人々にのみ知られるその存在は、まさに謎に包まれています。彼への依頼は、知人に知らされたメールアドレス宛に送られ、ヤタ自身が内容を吟味して、興味を持ったものだけを引き受けるという独特のスタイルをとっています。依頼主が抱える事情や問題に対し、彼はダシを駆使した料理で応え、その過程で依頼人の心に触れ、人間関係の機微を描き出していきます。

主な登場人物

ヤタ・ダイゴ: 『ダシマスター』の異名を持つ、一流の出張料理人であり、特にダシを扱う技術に優れています。かつては名門懐石料理店「瑞鹿」で料理人を務めていましたが、ある理由からヨーロッパへ渡り、社交界で出張料理人として高い評価を得ました。帰国後、現在は日本を拠点に活動しています。本名は八咫瑛次といい、「瑞鹿」六代目当主の非嫡出子という複雑な出自を持ちます。
高原承子: ヤタ・ダイゴの助手として彼を支える女性です。以前は広告代理店で会社員として働いていましたが、ある日偶然食べたカレーの味に感銘を受け、その料理人を探し求めたことがきっかけでヤタと出会います。その後、会社を辞め、彼の依頼窓口を担当するようになります。岐阜県高山市の出身です。
里村荘一郎: 厳格で気難しい性格で知られる、高名なグルメ評論家です。
国栖魚冴子: グルメジャーナリストであり、過去に20年間フランスで活動していた経験を持ちます。その実力は三ツ星シェフたちからも一目置かれるほどで、里村とは古い友人関係にあります。
久我毅蔵: 懐石料理店「瑞鹿」で五十年にわたり板長を務めた人物です。
巽慧: 懐石料理店「瑞鹿」の七代目当主。冷徹なビジネス感覚を持ち、「瑞鹿」の名声を利用した事業拡大に専念しています。彼は六代目当主の嫡出子であり、ヤタ・ダイゴにとっては異母兄にあたります。

連載の終焉

しかし、『グランドジャンプ』での連載中、本作には思わぬ事態が発生します。ウェブサイト上の画像を無断で模倣したとされる『トレース疑惑』が持ち上がり、これを受けて連載は休止。結果的に、打ち切りという形で終了を迎えました。この影響により、単行本はヤングジャンプ コミックス GJレーベルより全6巻が刊行されましたが、現在ではすべて絶版となっています。

この作品は、料理、特に日本料理の根幹とも言えるダシの奥深さを描きつつ、そこに絡む人間ドラマを通じて、食が持つ力や人との繋がりの大切さを訴えかけるものでした。しかし、その結末は残念な形での幕引きとなりました。

書誌情報（単行本 ヤングジャンプ コミックス GJ）

1巻: 2010年2月発売 ISBN 978-4-08-877817-4
2巻: 2010年5月発売 ISBN 978-4-08-877859-4
3巻: 2010年8月発売 ISBN 978-4-08-879018-3
4巻: 2010年12月発売 ISBN 978-4-08-879066-4
5巻: 2011年4月発売 ISBN 978-4-08-879137-1
6巻: 2011年9月発売 ISBN 978-4-08-879206-4

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