ダッシュ (洗剤)

ダッシュ（洗濯用洗剤）

ダッシュは、日本の大手化学メーカーであるライオン株式会社が、1967年から2001年まで販売していた家庭用洗濯用洗剤のブランド名です。

概要と歴史

ダッシュの歴史は大きく二つの時期に分けられます。

第1期（1967年 - 1985年）

1967年、ダッシュは「大型洗剤」として市場に登場しました。これは、当時としては世界でも珍しいAOS（アルファ・オレフィン・スルホン酸ナトリウム）という新しい界面活性剤を主成分とする画期的な洗剤でした。発売当初は粉末タイプのみでしたが、綿、麻、合成繊維といった一般的な洗濯物の洗浄に対応していました。パッケージは、視覚的にも分かりやすい薄い水色を基調としていました。

発売後も改良が重ねられ、1968年、1971年、1974年には組成やデザインが変更されました。1976年には使用量を減らしたコンパクトタイプの「ダッシュ25」が登場し、翌1977年にはシリーズ初となる液体洗剤「液体ダッシュ」が発売され、粉末と液体の両タイプが展開されました。

この時期には、酵素を配合した「ダッシュスポット・クリーニング」もラインナップに加わりました。しかし、1978年には初期の「ダッシュ」（大型洗剤）と「ダッシュ25」の製造が終了。その後、1982年に粉末タイプの「ダッシュ」が組成・デザインを刷新して再発売され、同年には「ダッシュスポット・クリーニング」も発売されました。

最終的に、この第1期のダッシュブランドは、1985年に粉末タイプと液体タイプともに製造が終了し、一時的に姿を消しました。

第2期（1989年 - 2001年）

ダッシュブランドは、1989年にコンパクト洗剤「全自動用Dash」として復活を遂げます。これは当時の全自動洗濯機に対応した粉末洗剤で、第1期とは異なり、パッケージにはプラスチック製の蓋が付属していました。全自動用Dashは、水30リットルに対し最小使用量25グラムという低使用量が特徴でした。この製品は1992年に漂白剤配合でリニューアルされています。

ブランド復活後も積極的に新製品が投入されました。1991年には袋入りの粉末洗剤「低温ダッシュ」、1993年には液体タイプの「ウエットダッシュ」、1994年には同じく液体で洗浄力を高めた「ハードダッシュ」が発売されました。1995年には、使用量が20gとさらに少ないコンパクトタイプの「漂白ダッシュ」が登場。

1996年には、全自動やドラム式洗濯機といった節水型の洗濯機に特化した「スーパーダッシュ」が発売されます。この製品は泡立ちを抑えつつ洗浄力を高める「スーパーノニオン」という成分を配合し、大容量の洗濯にも対応できるよう1.8kgサイズがラインナップされ、パッケージは群青色でした。

第2期のダッシュも継続的に改良が加えられましたが、最終的に2001年3月、ダッシュブランドはライオンの別の主要洗濯洗剤ブランドである「ブルーダイヤ」に統合される形で、家庭用洗剤としての販売を終了しました。

製品の特徴（初代ダッシュなど）

初代ダッシュは、高性能を謳い、従来の洗剤には配合されていなかった「ボラックス」という成分を含んでいました。キャッチコピーでは「<洗う力>がたくましい！」とアピールされ、ライオンが米・英との共同研究で開発した「アルファ・オレフィン」が繊維の奥の汚れを浮かせる強力な洗浄力を実現すると説明されていました。また、「3回洗っても洗えるスタミナ」があるとして、洗剤液を繰り返し使える経済性やすすぎの早さも特徴として挙げられていました。「せんいにやさしいボラックス配合」により、洗い上がりのふんわり感も提供するとされていました。泥汚れからウール、ナイロンまで、幅広い種類の衣類に対応する万能洗剤としての側面も強調されていました。

主な配合成分

ダッシュには、以下のような成分が配合されていました。

界面活性剤（AOSなど）
蛍光増白剤
漂白剤
酵素

広告活動

ダッシュは印象的なCMやキャッチコピーでも知られています。

キャッチコピー例:
1967年 - 1968年: 「叱らないで…ダッシュがバリバリ洗います！」
1968年 - 1970年: 「頼りになる洗剤・ダッシュ！」
1977年 - 1980年: 「キャップ一杯、汚れをダッシュ。」（液体ダッシュ）
1989年 - 1992年: 「洗うの、早い。すすぐの、早い。溶けるの、早い。」（全自動用Dash）
CMソング:
初期のCMでは、桜井順（水木ひろし名義）作詞・作曲による「ヘーイ、ミスター・ダッシュ」が使用され、ハニーナイツ、高橋和枝、田上和枝らが歌唱しました。
CM出演タレント:
佐々木信也（液体ダッシュ、1977年 - 1980年）
細野晴臣（全自動用Dash、1989年 - 1990年） - 複数のCMに出演。
坂口良子（ダッシュ、1993年）

現在

家庭用洗剤としてのダッシュの販売は終了しましたが、現在もライオンのグループ会社であるライオンハイジーン株式会社から、クリーニング店やリネンサプライ業者向けの業務用洗剤ブランドとして存続しており、「低温ダッシュ」「無りんダッシュダブルコーソ」「無蛍光ダッシュダブルコーソ」「液体ハードダッシュ」「液体ウェットダッシュ」といった製品名が引き継がれています。