ダッシュ (記号)

ダッシュの種類と用法

ダッシュは、横棒状の記号の総称で、欧文組版と和文組版で種類や用法が異なります。主にenダッシュとemダッシュ、そして和文における倍角ダッシュや波ダッシュなどがあります。これらの記号は、一見似ていますが、それぞれ明確な使い分けが存在します。

欧文ダッシュ

欧文組版では、enダッシュ（–）とemダッシュ（—）の2種類が主要です。名前の由来の通り、enダッシュは欧文フォントのnの幅、emダッシュはmの幅に相当する長さです。

enダッシュ（–）： 区間や範囲、単語間の関係性（並列、対照、方向、対立）を表す際に使用します。例えば、「10–20」は「10から20まで」を意味し、「10-20」のようにハイフンを使用した場合とは異なる意味を持ちます。また、複合語においても使用され、Cauchy–Schwarzの不等式のように、複数の単語の結合を示す際に用いられます。
emダッシュ（—）： 文と文の間、字句と字句の間に用いられ、時間の経過や説明・副題、引用、省略などを示す際に用いられます。例えば、説明を加える際に括弧のように使用したり、文章の途中で内容を補足する場合などに用います。

ASCIIコードにはenダッシュとemダッシュは存在しないため、enダッシュはハイフン（-）で、emダッシュはハイフン2つ（--）で代用されることが多くあります。ただし、本来の意味合いを正しく伝えるためには、Unicode文字を使用することが望ましいです。

和文ダッシュ

和文組版では、倍角ダッシュ（——）がemダッシュと同様に用いられます。活字では2倍の大きさで作られますが、コンピュータ上では通常2文字の全角ハイフンを並べて表現します。

他に、波ダッシュ（〜）があり、enダッシュやemダッシュと異なる用途で使用されます。しばしば全角チルダ（～）で代用されることもありますが、厳密には異なる記号であることに注意が必要です。

Unicodeと符号位置

enダッシュはU+2013、emダッシュはU+2014、波ダッシュはU+301Cで表現されます。これらのUnicode文字を使用することで、異なるシステム間での文字化けを防ぐことができます。

全角ダッシュのマッピング問題

JIS X 0208およびJIS X 0213では、全角ダッシュはEM DASH (U+2014) と定義されています。しかし、過去のShift_JISとの対応表において、誤ってU+2015が割り当てられていたケースがあり、現在でもこの誤った対応表に基づいて実装されたシステムが存在します。そのため、Shift_JISで作成されたテキストデータは、システムによっては文字化けする可能性があります。AppleのMacJapaneseやWindows Vista以降のIMEパッドでは、正しくU+2014にマッピングされていますが、システム環境によって表示が異なる可能性がある点に注意が必要です。

まとめ

ダッシュは一見シンプルな記号ですが、種類によって異なる意味や用法を持ちます。特に、enダッシュとemダッシュ、そして和文のダッシュは、正確な意味を伝えるために正しく使い分ける必要があります。Unicode文字を使用することで、システム環境の違いによる表示の問題を回避することができます。また、歴史的な経緯から生じたマッピング問題にも注意が必要です。

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