ダニエル・マクリース

ダニエル・マクリース：19世紀イギリスを代表するアイルランド人画家

ダニエル・マクリース（1806年-1870年）は、アイルランド、コーク生まれの画家です。ロンドンで主に活動し、歴史画や人物画を得意とし、その卓越した技量で19世紀イギリス美術史に大きな足跡を残しました。彼の父はスコットランド出身で、靴職人など様々な職に就いた人物でした。

ロンドンでの活躍と成功

地元の美術学校で基礎を学んだ後、マクリースは1827年にロンドンへ移住します。そして、名門であるロイヤル・アカデミー・オブ・アーツの美術学校に入学、研鑽を積みました。才能溢れる若き画家は、1829年からアカデミーの展覧会に出品を始め、1831年には歴史画で金メダルを受賞するなど、早くからその才能を開花させました。

彼の才能は絵画にとどまりません。チャールズ・ディケンズなどの書籍の挿絵制作や、ロンドンの文芸雑誌『Fraser's Magazine』への肖像画の提供など、多岐に渡る活動で活躍しました。同誌に掲載された多くの文学者や著名人の肖像画は、1871年に『Maclise Portrait Gallery』として画集にまとめられ出版されています。

アカデミーでの評価も高く、1835年には準会員、1840年には正会員に選出されています。これは、彼の画業がいかに高く評価されていたかを物語っています。

ウェストミンスター宮殿の壁画

1834年の火災で焼失したウェストミンスター宮殿の再建に際し、マクリースは壁画制作を依頼されました。彼はこの大役を担うため、ドイツなどへ赴き、当時最新の壁画技法を研究しました。そして、1860年から『ワーテルローの戦い後のウェリントン卿とブリュッヘル将軍の会見』の制作に取り組み、1861年に完成させました。この大規模な壁画は、彼の代表作の一つであり、歴史的な場面をドラマチックに表現しています。そのサイズは3.68m×13.92mにも及びます。

歴史と文学を題材とした作品

マクリースの作品には、歴史的な題材や文学作品からの着想が多く見られます。彼は、歴史の重要な瞬間や文学作品の世界を、細密な描写と豊かな色彩で表現することに長けていました。彼の作品からは、歴史への深い理解と、文学への造詣の深さが感じられます。

没後

1870年、ロンドンで生涯を閉じました。彼の死は、イギリス美術界に大きな損失をもたらしました。しかし、彼の残した作品は、現在も人々を魅了し続けており、19世紀イギリス美術史における重要な位置を占めています。彼の作品は、歴史と文学を愛する人々にとって、今もなお重要な文化的遺産となっています。

参考文献

James Dafforne: Pictures by Daniel Maclise. With descriptions and a biographical sketch of the painter. Virtue, Spalding and Daldy, London 1880
Nancy Weston: Daniel Maclise. An Irish artist in Victorian London. Four Courts Press, Dublin 2001, ISBN 1-85182-574-6.
* Maclise, Daniel. In: Encyclopædia Britannica. 11. Auflage. Band 17: Lord Chamberlain – Mecklenburg. London 1911, S. 262.

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