ダブリン大学

ダブリン大学トリニティ・カレッジ：アイルランド最古の学府

ダブリン大学は、アイルランドの首都ダブリンに位置する国立大学です。1592年、イングランド女王エリザベス1世によって設立され、オックスフォード大学やケンブリッジ大学をモデルにしたカレッジ制大学として知られています。しかし、ダブリン大学にはトリニティ・カレッジというただ一つの構成カレッジしか存在せず、そのため、大学とカレッジの名称は実質的に同義語として用いられています。日本語では「ダブリン大学トリニティ・カレッジ」とも呼ばれます。

歴史と伝統

エリザベス1世は、ダブリン大学を「大学の母（mater universitatis）」として設立しました。創立憲章は、トリニティ・カレッジに大学の運営に必要な権限を与えており、初代学長や教授陣の選任権などもカレッジに委ねられました。その後、他のカレッジを設立する計画は何度か持ち上がりましたが、資金不足などの理由で実現しませんでした。

大学とカレッジの関係については、1898年の高等裁判所の判決で「一つの組織」と認定されています。しかし、法的には大学とカレッジは別個の法人格を持ち、それぞれが財産を所有し、借金をし、職員を雇用する権利を有しています。この複雑な関係は、大学とカレッジの改革に関する議論が何度も行われてきた歴史を反映しています。

組織と運営

ダブリン大学は、総長または副総長が議長を務める評議会（Senate）によって運営されています。評議会は、1857年の特許状によって法人格を得ましたが、その起源は大学の創立当初にさかのぼります。評議会のメンバーは、大学の教員や卒業生などから構成され、学位授与や大学の運営に関する重要な決定を下します。評議会は、学位授与式をラテン語で行うなど、古風な伝統を今も保持しています。

大学は、評議会が選出する2名の評議員を大学経営協議会（University Council）に派遣しています。経営協議会は、事実上トリニティ・カレッジの一部であり、大学の運営に携わっています。また、巡察官は、大学の総長と司法関係者によって構成され、大学の運営に関する最終的な上訴審理を行います。

学位授与制度

ダブリン大学では、トリニティ・カレッジで修了した学生に学士号（B.A.）が授与されます。人文科学や科学系の卒業生は4年間の課程を修了することで教養学士号を取得し、専門学部卒業生には普通教養学士号が授与された後、専門学位が授与されます。

ダブリン大学は、オックスフォード大学やケンブリッジ大学の修士号取得者に対して「アド・エウンデム学位」を授与する制度を持っています。この制度は、特に他の大学で教員を務める者などが、ダブリン大学のガバナンスに参加する際に利用されます。また、「ユウレ・オッフィーキ（jure officii）」という制度もあり、特定の職務に就く教員に対して修士号が授与される場合があります。

入学試験

ダブリン大学への入学は、中央出願局（CAO）を通じて行われます。アイルランド国内の学生だけでなく、イギリスや欧州連合諸国の学生もCAOを通じて出願できます。入学試験は、リービング・サーティフィケート（アイルランドの高校卒業資格）や国際バカロレアなどの試験結果に基づいて行われます。大学には最低限の入学要件があり、英語、数学などの科目で一定の点数を取得する必要があります。また、学部によっては、特定の科目での高得点や追加試験が必要な場合もあります。入学試験を免除される場合もあり、その際はファウンデーション・プログラムへの入学が検討されます。

議会代表

ダブリン大学は、1613年からアイルランド議会に議員を選出する権利を有しており、アイルランドの歴史において重要な役割を果たしてきました。アイルランド自由国の成立後、大学はドイル・エアラン（アイルランド下院）に代表を送り、現在ではシャナズ・エアラン（アイルランド上院）に3名の上院議員を選出しています。

まとめ

ダブリン大学トリニティ・カレッジは、歴史と伝統を誇るアイルランドを代表する大学です。独特の大学とカレッジの関係、伝統的な学位授与制度、そしてアイルランド政治への関与など、多くの魅力的な特徴を持つ大学です。

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