シャナズ・エアラン

シャナズ・エアラン：アイルランドの上院

シャナズ・エアラン（Seanad Éireann）は、アイルランドの二院制議会であるウラクタス（Oireachtas）の上院です。アイルランド語で「元老院」を意味し、下院であるドイル・エアラン（Dáil Éireann）と対をなす存在です。上院議員はセナドール（Seanadóir）と呼ばれています。

構成と選出方法

シャナズ・エアランは60議席で構成され、その選出方法は多様性に富んでいます。

1. 首相指名: 首相が11人の議員を指名します。
2. 大学出身者: アイルランドの大学（ダブリン大学3名、国立大学3名）から選出された6名が議員となります。
3. 職業別委員会: 残り43名は、5つの職業別委員会から選出されます。これらの委員会は、文化・教育、農業、労働、産業・商業、行政の各分野を代表し、ドイル・エアラン議員、元シャナズ・エアラン議員、地方議員などからなる「指名組織」と呼ばれる団体が候補者を指名します。委員会は各分野の専門家によって構成され、候補者は政党所属者や、ドイル・エアラン選挙落選者なども含まれます。

選出は、単記移譲式投票による比例代表制で行われます。ただし、職業別委員会選出の場合は、有効投票数が1000になるように調整されます。議員になるには、21歳以上のアイルランド市民で国内在住であることが条件ですが、ドイル・エアラン議員との兼職は認められていません。

権限と役割

シャナズ・エアランの権限は、ドイル・エアランに比べて限定的です。イギリスの上院と同様に、主に諮問機関としての役割を担い、法案の修正などを提案できますが、ドイル・エアランの決定を覆す力はありません。法案の成立を遅らせることはできますが、拒否権はありません。

憲法では、シャナズ・エアランの同意を得られない場合の措置も規定されています。例えば、ドイル・エアランで可決された法案は、シャナズ・エアランで90日以内に承認されない場合、90日後180日以内にドイル・エアランが承認したとみなすことができます。予算関連の法案では、21日後に承認されたとみなされます。緊急性の高い法案では、大統領の同意を得て、承認期間を短縮することも可能です。

しかし、シャナズ・エアランの権限が全くないわけではありません。財政関連法案の判断のための優先権委員会設置を大統領に要請したり、重大な法案について国民投票または総選挙を促すことも可能です。

歴史

アイルランドにおける上院の歴史は古く、イギリス統治下のアイルランド貴族院まで遡ります。アイルランド独立後、一時的に上院が存在しましたが、民族主義者のボイコットもあり、十分に機能しませんでした。現在のシャナズ・エアランは、1937年のアイルランド憲法制定によって設置されました。初期の選出方法は、国民による直接選挙が検討されましたが、間接選挙制へと移行しました。

職業別委員会制度は、1930年代のローマ・カトリックの社会教理の影響を受けています。社会の多様な職業集団の協調を重視した思想が、この制度に反映されていると考えられます。

活動

シャナズ・エアランは独自の議事規則を定め、議長や院内総務を選出します。常任委員会を設置し、ドイル・エアランと合同で委員会を開くこともあります。政府には、閣僚を2名まで派遣できます。

まとめ

シャナズ・エアランは、アイルランド政治において重要な役割を担いつつ、ドイル・エアランに対して限定的な権限を持つ上院です。その構成や権限、歴史を理解することで、アイルランドの政治制度をより深く理解することができます。

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