ダブル・スター

ダブル・スター（Double Star）

『ダブル・スター』は、アメリカのSF作家ロバート・A・ハインラインによる未来を舞台にした小説です。この作品は1956年に『アスタウンディング』誌で連載され、その年のヒューゴー賞を受賞しました。また、1987年にはローカス賞のオールタイム部門でも評価されています。日本では1964年に井上勇の翻訳により『太陽系帝国の危機』として出版され、さらに1994年には森下弓子の新訳で『ダブル・スター』というタイトルで再刊されています。

あらすじ

物語の舞台は、月、火星、金星、木星の衛星が植民地化された未来の太陽系です。この時代、太陽系皇帝の下で議会制民主主義が運営され、火星には独自の文化を持つ火星人が先住民として存在しています。物語は、落ちぶれた俳優ロレンゾ・スマイスの視点で進行し、彼の不運な状況から始まります。ロレンゾはかつての名声が失われ、経済的に困窮していましたが、ある宇宙飛行士に声をかけられ、雇われることになります。

彼は火星に向かう宇宙船で、著名な政治家ジョン・ジョセフ・ボンフォートの影武者を務めることになると知ります。ボンフォートは拡張主義派のリーダーであり、次の総選挙での当選が見込まれていました。しかし、現実には彼は政敵に誘拐され、その間にロレンゾが代わりに公務をこなす必要が生じました。

ロレンゾは、影武者としての役割を果たすことに必死になります。彼は周囲の支援を受け、自身の外見や性格をボンフォートに似せる努力を重ねていきます。やがて、彼はボンフォートの考え方や性格をも模倣し、政治的な行動を開始することになります。

事故によりボンフォートが救出されますが、彼の健康は薬物によって著しく悪化していました。その結果、内閣の総辞職を受けて、ロレンゾは一時的な首相を務めることを余儀なくされます。さらに、彼はボンフォートとして次の選挙戦を戦わなければならなくなりました。

この選挙戦における大きなテーマは、地球人が支配する太陽系において火星人に参政権を与えることの是非です。ロレンゾは、火星人として扱われ、自らが拡張主義政策を進めながら選挙を戦っていくことになります。

登場人物

• - ロレンゾ・スマイス: 失業中の俳優。自称「偉大なるロレンゾ」。
• - ジョン・ジョセフ・ボンフォート: 太陽系帝国の元最高大臣で、拡張主義連合の首領。
• - ペニー: ボンフォートの優秀な女性秘書。
• - ダック: 宇宙ヨットの機長。
• - ジョック: 宇宙ヨットの操縦士。

用語

• - ファーリー・ファイル: ボンフォートが接触した人物の情報を収めたデータベース。
• - ニュー・バダビア: 月の地下にある太陽系帝国の首都。
• - 生命杖: 成年に達した火星人が常に携帯する武器。

書誌情報

• - 『太陽系帝国の危機』: 井上勇訳、1964年。
• - 『ダブル・スター』: 森下弓子訳、1994年。

このように、『ダブル・スター』は、劣悪な状況から成り上がる若者の成長物語だけでなく、政治的なテーマや倫理的な問題をも内包した深い物語となっています。

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