ダリル・ランズウィック

ダリル・ランズウィック

ダリル・ランズウィックは、1946年10月12日に生まれたイギリスの音楽家です。クラシック音楽の専門的な教育を受けながらも、作曲家、編曲家、ジャズミュージシャン、音楽プロデューサー、そして教育者として、非常に幅広い分野でその才能を発揮しました。

経歴

レスターに生まれたランズウィックは、ワイゲストン男子グラマースクールを経てケンブリッジ大学コーパス・クリスティ・カレッジで学びました。彼の音楽家としてのキャリアは1960年代半ばに本格化し、ベーシストとしてイギリスのジャズシーンで活動を開始します。ディック・モリシーやジョン・ダンクワースといった当時のトップジャズミュージシャンたちと共演し、彼らと共に12年間にわたるツアー活動を通じて、演奏家としてだけでなく作曲家としても経験を積みました。

ジャズグループとしては、1969年にはライオネル・グリグソン-ピート・バーダンクインテットに参加。1972年にはイアン・ヘイマー七重奏団で演奏・録音を行い、このバンドではタビー・ヘイズら多くの実力派ミュージシャンと共演しました。また、1970年代を通じてロンドン・ジャズ・フォーのメンバーとしても活躍するなど、当時のイギリスジャズ界で重要な役割を果たしました。

ジャズでの活動と並行して、スタジオミュージシャンとしてもポピュラー音楽の世界に進出しました。特にアラン・パーソンズ・プロジェクトの初期のレコーディングに参加したほか、著名な歌手エルトン・ジョンとも共演しています。この時期から、彼の活動は特定のジャンルに限定されない多様性を見せ始めます。

彼の共演者はジャズやポップスにとどまりませんでした。クラシック音楽の分野ではロンドン・シンフォニエッタやナッシュ・アンサンブルといった著名な室内オーケストラやアンサンブルと、声楽分野ではキングズ・シンガーズやサラ・ヴォーンと、そして現代音楽の巨匠であるピエール・ブーレーズやオーネット・コールマン、さらには指揮者のサイモン・ラトルといった、非常に多様な音楽家・団体と関わりを持ちました。歌手のクレオ・レーンは彼の作品をいくつか録音しており、作曲家としての評価も高まっていきました。

1983年から1998年にかけては、前衛的な電子音楽ヴォーカルグループである「エレクトリック・フェニックス」のテノール歌手および専属作曲家を務めました。このグループで世界各地での演奏活動を行い、ルチアーノ・ベリオ、ピエール・ブーレーズ、ジョン・ケージ、アンリ・プッスールといった20世紀後半の重要な作曲家たちと共同で作品を制作しました。この経験は彼の作曲活動に大きな影響を与えたと考えられます。

音楽教育の分野でも貢献を残しており、1995年から2005年までの10年間、トリニティ・カレッジ・オブ・ミュージックの作曲部門長を務めました。この期間に、藤倉大、Angie Atmadjaja、Harris Kittos、レイナルド・ヤングといった後の世代の作曲家たちが彼の薫陶を受けています。

作曲家としては、映像作品のための音楽も多く手掛けています。映画では『Gullsandur (Golden Sands)』（1985年）、『No Surrender』（1985年）などの音楽を担当し、テレビシリーズではビル・ネルソンと共作した『Brond』（1987年）のほか、『The Advocates』（1991年〜92年）、『Seekers』（1993年）といった作品に音楽を提供しています。彼の主要なオーケストラ作品の一つである、声とコンピュータ制御による電子音、そしてオーケストラのための「Maybe I Can Have an Everlasting Love」は、2005年にロンドンで初演されました。また、彼の作品はジェフリー・スキッドモアが指揮するBBC交響楽団によっても演奏されています。

さらに、音楽プロデューサーとしても活動し、ピアニストのキース・ティペットの録音などを手掛けています。編曲に関する専門知識をまとめた書籍『Rock, Jazz and Pop Arranging』は、この分野のスタンダードな教科書として広く利用されています。

ダリル・ランズウィックは、その多岐にわたる活動を通じて、クラシック、ジャズ、ポップス、現代音楽といったジャンルの垣根を越え、イギリス音楽界に大きな足跡を残しました。

（ディスコグラフィーは彼の広範な活動を示すものとして多数存在しますが、ここでは本文での記述に留めます。）

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