ダルアー

シリア南西部、ダルアー：歴史と現在を織りなす都市

ダルアーは、シリア南西部に位置するダルアー県の県都です。ヨルダン国境から程近いこの都市は、豊かな歴史と複雑な現代史を併せ持ちます。人口は約7万5千人で、約6千人のパレスチナ人難民キャンプも存在します。

古代からの歴史

ダルアーの歴史は古く、カナン人の時代まで遡ります。紀元前15世紀頃には、古代エジプトの記録にも「アタラア」という名で登場しており、旧約聖書にも言及されるバシャン王国の都市「エドレイ」あるいは「アドラア」が、現在のダルアーだと考えられています。ローマ劇場などの古代ローマ時代の遺跡も発見されており、古代から交通の要衝として栄えてきたことがうかがえます。636年には、近郊でイスラム軍とビザンティン帝国軍によるヤルムークの戦いが勃発し、イスラム軍の勝利に繋がりました。街の中心部にあるモスクは、13世紀に古代建築の建材を再利用して建てられたものです。

交通の要衝

ダルアーは、ダマスカスからヨルダン、そして内陸のボスラへと続く主要道路の交差地点に位置しています。オスマン帝国時代には、1908年にヒジャーズ鉄道が開通。ダマスカスとメディナを結ぶ本線の他、地中海岸の港湾都市ハイファとアッコン、内陸のボスラへ向かう支線もこの都市に集まりました。ハイファ方面への支線は1946年に廃線となっていますが、交通の要衝としての役割は現在も続いています。

農業と商業

ダルアーの産業基盤は農業です。周辺の農村から集められた小麦や大麦などの農作物が市場で取引され、農村住民への生活物資の供給も行われています。農産物の集散地として、地域経済の中心的な役割を担っています。

シリア内戦とダルアー

2011年3月以降、シリアではバッシャール・アル＝アサド政権に対する抗議デモが活発化しました。ダルアーも例外ではなく、政府軍の介入により、同年4月には市街戦が発生（ダルアー包囲戦）。多くの死傷者が出ました。シリア内戦が勃発すると、長らく反政府勢力の支配下に置かれていました。しかし2018年6月、政府軍による反攻が始まり、激しい戦闘が繰り広げられました。同年7月6日、反政府勢力はダルアー県全域からの撤退を決定しました。

まとめ

ダルアーは、古代から続く歴史と、交通の要衝としての役割、そして農業を基盤とした経済活動が特徴の都市です。しかし、近年ではシリア内戦の激戦地となり、その歴史に新たな一章が刻まれました。古代遺跡から現代の紛争まで、複雑に絡み合う歴史を持つダルアーは、シリアの歴史と現状を理解する上で重要な場所と言えるでしょう。今後も、その歴史と現状、そして将来に注目していく必要があります。

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