ローマ劇場

ローマ劇場の詳細

ローマ劇場は、古代ローマ時代に建設された半円形の劇場です。その起源は、グナエウス・ポンペイウスが古代ギリシアの劇場を参考に建設したポンペイウス劇場に遡ります。ローマの建築はギリシアの影響を強く受けており、劇場の設計も例外ではありませんでしたが、ローマ劇場は独立した基礎の上に築かれる点がギリシア劇場とは異なります。ギリシア劇場が斜面を利用するのに対し、ローマ劇場は平地にも建設可能でした。

ローマ劇場の構造と特徴

ローマ劇場は、スペインから中東に至るローマ帝国の広範囲に建設されました。ローマ建築は各地の建築技術に影響を与え、世界中にローマ劇場の特徴を持つ劇場が建設される要因となりました。

ローマ劇場とアンフィテアトルム（円形闘技場）は、共にローマン・コンクリートを主な建材とし、公共の娯楽施設として帝国中に建設されました。しかし、それぞれの施設で開催されるイベントが異なり、その構造にも違いが見られます。アンフィテアトルムが競走や剣闘士の戦いを催すのに対し、ローマ劇場では演劇、パントマイム、合唱、演説などが催されました。そのため、ローマ劇場は半円形の形状で音響効果を高める工夫がされていますが、アンフィテアトルムは完全な円形をしています。

ローマ劇場は、その立地条件により若干の違いはあるものの、共通の構造を持っています。舞台の背後にある高い壁はスカエナエ・フロンスと呼ばれ、円柱で支えられ、皇帝や神々の像が収められた壁龕で飾られていました。舞台の前端を支えるアーチ壁はプロスカエニウムと呼ばれ、ヘレニズムの影響が見られます。スカエナエ・フロンスは、元々は劇の背景を提供するものでしたが、最終的には建物の一部となりました。劇場全体は、舞台であるプルピタム、半円形のオーケストラ、そして観客席であるカウェアに分けられます。観客席への出入り口はヴォミトリウムと呼ばれていました。

観客席は、ギリシア劇場のように丘や斜面に建設されることもありましたが、ローマ劇場は必ずしも斜面を利用したわけではなく、平地にも建設されました。観客席には屋根はありませんでしたが、日差しや雨を避けるために天幕（vela）が張られることもありました。

初期のローマ劇場は木造で、祭りの際に建設されては解体されていました。しかし、紀元前55年に初の恒久的劇場であるポンペイウス劇場が建設されたことで、この慣習は終わりました。ポンペイウス劇場には神殿も設けられていました。また、いくつかのローマ劇場は建設途中で完成しなかったものも見られます。

ローマ市内では、建設から長い年月を経た劇場は少なく、その遺跡もほとんど残っていません。しかし、現代のオランジュにあるArausio劇場は、ローマ劇場の典型的な例であり、そのスカエナエ・フロンスは西ローマ帝国の劇場設計を今に伝えています。Arausio劇場は、観客席も再建され、素晴らしい音響効果を体感できることから、ローマ建築の驚異を今に伝えています。

ローマ劇場の主な所在地

以下に、現在の国別に主なローマ劇場の所在地を列挙します。

ブルガリア: プロヴディフ、ソフィア、スタラ・ザゴラ
エジプト: アレクサンドリア
フランス: アルル、オータン、リヨン、オランジュ
ドイツ: マインツ
イタリア:フィエーゾレ、チヴィダーテ・カムーノ、ブレシア、ポンペイ、スポレート、タオルミーナ、ローマ、オスティア
イスラエル: 海辺のカイサリア
ヨルダン: アンマン、ジャラシュ、ペトラ
リビア: レプティス・マグナ、サブラタ
ポルトガル: リスボン
スペイン: カルタヘナ、サラゴサ、トレド、マラガ、メリダ
シリア: ボスラ、ドゥラ・エウロポス、パルミラ
トルコ: ビュザンティオン、エフェソス、ヒエラポリス、クニドス、ミレトス、ペルガモン、Sagalassos、Termessos
北キプロス: サラミス市
イギリス: セント・オールバンズ

ローマ劇場は、古代ローマの文化と技術力を示す重要な遺産であり、その建築様式は後の劇場建築に大きな影響を与えました。

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