ダルガチ

ダルガ（daruγa）とダルガチ（daruγa-či）

ダルガは、モンゴル帝国における官職の一つであり、軍政や民政、財政などの重要な役割を担っていました。この職位は、モンゴル軍団の早期に設立されたもので、ジャルグチ（軍政官）やビチクチ（財政官）と共に、初期モンゴル帝国の基盤を支えました。官職名である「ダルガ」は、漢語では達魯花赤と表記され、ペルシア語文献の『集史』ではダルガやダールーガとして言及されています。

ダルガの役割と任務

ダルガは、中央政権から派遣されて地方の民政を担当し、行政の長官としての責任を負っていました。主な任務は、徴税や戸口調査、駅伝の事務、そして治安維持など、多岐にわたります。ダルガは地方の統治を通じて、モンゴル帝国が占領した領域の安定に寄与しました。特に、チンギス・カンによって統一された後、モンゴル軍が遠征した地域、特に旧金朝やホラズム・シャー朝などにおいて、モンゴル皇帝の権限を代表する役割を担ったのです。

大元ウルスとダルガの制度化

クビライ・カアンが大元ウルス（元朝）を築く際、ダルガはその行政組織の一環として正式に制度化されました。この時代には、様々な民族集団が統治下にあり、モンゴル人はダルガチに任命されることが一般的でしたが、稀に西域人や女真人が選ばれることもありました。一方で、漢人はこの職位に就くことが許されていなかったため、モンゴル人中心の官職体系が形成されました。この階級差別は、元の行政運営において重要な特徴として残り、社会のさまざまな面に影響を与えました。

ダルガの影響

また、ダルガは大元ウルスだけでなく、イルハン朝やその後のティムール朝など、他のテュルクやモンゴル系の政権にも引き継がれました。これにより、ダルガの制度は長期にわたり、中央アジアやイランの政治制度にも影響を与えることとなります。このように、ダルガはモンゴル帝国の歴史において重要な役割を果たし、官職制度の発展に寄与したと評価されています。

参考文献

• - 村上正二「4 モンゴル帝国の成立と分裂 四 モンゴル帝国の内部構造」『岩波講座 世界の歴史9 中世3 内陸アジア世界の展開I』岩波書店、1970年2月。

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