ダンジョンズ&ドラゴンズに関する論争

ダンジョンズ&ドラゴンズに関する論争

『ダンジョンズ&ドラゴンズ』（D&D）は、テーブルトークRPG（TRPG）として世界中で愛されていますが、その一方で、発売当初から様々な論争の的となってきました。メディアによる否定的な報道、宗教団体からの批判、そしてゲームがプレイヤーに与える心理的な影響など、その論点は多岐にわたります。

宗教的な批判

D&Dは、その内容から悪魔崇拝や魔術を奨励しているという批判を受けてきました。特に1980年代には、宗教団体から妖術や悪魔崇拝を助長するという非難が相次ぎました。これらの批判は、TRPGというジャンル全体、さらにはファンタジーロールプレイングゲーム全般にも向けられることがあります。

福音派キリスト教原理主義者の漫画家、ジャック・チックは、自作の小冊子でD&Dをカルト団体の勧誘手段として描きました。このような見方は、悪魔的儀式虐待の概念と共通する点があり、社会に大きな影響を与えました。

パトリシア・プリングは、D&D撲滅を目指す団体BADDを設立し、D&Dがレイプや自殺を奨励していると主張しました。彼女の活動は、D&Dに対する社会的な不安を煽る一因となりました。

ウィリアム・シュノーバレンは、D&Dが悪魔崇拝団体によってキリスト教的な価値観を破壊するために利用されていると主張しました。彼の論説は、宗教的な視点からD&Dを批判する人々に影響を与えました。

心理的な影響

D&Dは、プレイヤーに心理的な問題を引き起こすという噂も広まりました。空想と現実の区別がつかなくなり、精神疾患や自殺につながるという主張も存在しました。

1979年に発生したジェームズ・ダラス・エグバート3世の失踪事件は、TRPGと関連付けられて報道されました。メディアは、エグバートが蒸気トンネル内でライブRPGをプレイ中に迷ったのではないかと推測し、同様の「蒸気トンネル事件」についての噂が広まりました。

ローナ・ジャフィの小説『メイジズ・アンド・モンスターズ』は、エグバート事件を基にした物語で、TRPGがプレイヤーの精神に悪影響を与える可能性を描きました。この小説は、映画化もされ、TRPGに対する一般社会の不安を高めることになりました。

TSRの対応

批判を受けて、TSR社はAD&D第2版で悪魔などの名称を変更し、表現を一部変更しました。しかし、後の版では再びこれらの要素が取り入れられ、悪魔崇拝に関する記述も公然と扱われるようになりました。

著作権侵害

初期のTSRの出版物では、J・R・R・トールキンの作品から種族名などが借用されていました。後に、著作権侵害を避けるために、これらの名称は変更されました。また、『ディーティーズ&デミゴッズ』では、クトゥルフ神話やメルニボネ神話からアイデアが借用され、問題となりました。

その他の論争

イスラエル国防軍が兵士のD&Dプレイを推奨していないという報道や、刑務所でD&Dがギャング活動を助長するという理由で禁止された事例もあります。

D&Dの成功は、共同制作者間のロイヤリティ分配をめぐる訴訟や、TSR社内の経営権争いも引き起こしました。

ファンタジー作品への影響

D&Dの普及により、ファンタジー作品に体系化や論理性を求める傾向が強まりました。魔法が高度に体系化されていることを当然とし、体系化されていない作品を非難する人々は「ファンタジー警察」と揶揄されています。

D&Dを巡る論争は、単なるゲームの是非にとどまらず、社会、宗教、心理、著作権など、様々な問題と複雑に絡み合っています。D&Dが社会に与えた影響は大きく、その歴史はTRPGというジャンルの発展と深く結びついています。

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