ダンディーケーキ

ダンディーケーキ：スコットランドを代表する伝統菓子

ダンディーケーキは、イギリス・スコットランドのダンディー市で生まれた、歴史と伝統を誇るフルーツケーキです。オレンジピールや地元特産のダンディー・マーマレード、そしてアーモンドがふんだんに使用され、しっとりとした食感と奥深い風味が特徴です。クリスマスケーキとしても人気が高く、その保存性の良さから、長く愛されてきたお菓子です。

歴史：ダンディー・マーマレードと歩んだ歴史

ダンディーケーキの起源は古く、18世紀まで遡ります。ダンディーの菓子職人たちが生み出したこのケーキは、当初はサルタナケーキと呼ばれていました。そのレシピ開発の中心となったのは、ダンディー・マーマレードで有名なキーラー社 (James Keiller & Son) です。

キーラー社は、スペイン産のアーモンド、サルタナレーズン、セビリアオレンジを材料に、ダンディーケーキを考案しました。これらの材料が容易に入手できたのは、ダンディー港がヨーロッパとの貿易拠点として栄えていたためです。特にスペインからは、アーモンドやオレンジが大量に輸入されていました。

特徴的なアーモンドの飾り付けも、キーラー社によるものです。まるごとアーモンドを放射状に並べるこの手法は、ダンディーケーキの象徴的な見た目となっています。

キーラー社の創業に携わったジャネット・キーラーは、お菓子や乾燥フルーツの輸出入、販売を手掛けていました。彼女が開発したセビリアオレンジを使ったマーマレードは大成功を収め、大量生産の時代を切り開きました。このマーマレードは、それまでの厚切りオレンジピールを使ったマーマレードとは異なり、細かく刻まれた皮を使用することで、塗りやすく食べやすくなっていました。

1800年代中頃以降、キーラー社では、年間を通して安定した需要を生み出すため、新たな商品の開発に着手しました。こうして誕生したのが、「キーラーケーキ」です。これが、現在のダンディーケーキの原型となりました。

製法：伝統の技と現代の工夫

ダンディーケーキの生地は、小麦粉、ブラウンシュガー、バター、卵、ベーキングパウダーを主な材料として作られます。そこに、オレンジピール、カラント、サルタナレーズン、刻んださくらんぼの砂糖漬け、マーマレード、アーモンドパウダーなどが加えられます。

製法は、パウンドケーキと同様のシュガーバッター法を用いたバターケーキです。バターとブラウンシュガーをクリーム状に練り上げ、卵を少しずつ加えながら空気を含ませます。その後、小麦粉とベーキングパウダー、果実類を混ぜ合わせ、グルテンの発生を抑えるように丁寧に仕上げます。

生地を丸い型に流し込み、上に放射状にアーモンドを飾り付け、オーブンでじっくりと焼き上げます。

さらに、生地にスコッチウィスキーを加えることで、風味豊かなケーキに仕上げることもできます。アルコール分は焼き上げる過程で揮発するため、安心して楽しめます。ウィスキーの代わりに紅茶を使うことも可能です。

ダンディーケーキは、保存性を高めるため、低温で長時間焼くことが重要です。焼き上がり後も、余分な水分を飛ばすために、数日間寝かせる必要があります。長期保存する場合は、「feed」と呼ばれる方法を用い、数日に一度、少量のウィスキーを生地に含ませることで、熟成させ、風味をより一層豊かにすることができます。

まとめ：スコットランドの誇り、ダンディーケーキ

ダンディーケーキは、その歴史、製法、そして味において、スコットランドの伝統と文化を凝縮したお菓子です。独特の風味と食感、そして美しい見た目で、多くの人々を魅了し続けています。EUの原産地名称保護制度への申請も進められており、その地位はますます高まっています。一度味わえば、その魅力の虜になることでしょう。

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