ダヴィド・ガレジ複合修道院

ダヴィド・ガレジ複合修道院は、ジョージア東部カヘティ地方、トビリシから南東へ約70kmのガレジ山麓に位置する、歴史と文化が息づく修道院群です。この修道院は、100近くの小室、聖堂、礼拝堂、食堂、居住部屋などが岩をくりぬいて作られており、その独特な景観は訪れる人々を魅了します。

歴史

ダヴィド・ガレジの歴史は6世紀に遡ります。ジョージアにやってきたアッシリア十三教父の一人、ダヴィド・ガレジェリがこの地に修道院を設立したのが始まりです。彼の弟子であるドドやルキアンらがそのラヴラを拡大し、新たな修道院を建設しました。その後、王侯貴族の支援や聖イラリオンの監修のもと、9世紀にはさらなる発展を遂げました。また、グルジア正教会の代表的な讃美歌「汝は葡萄の木」の作者として知られるデメトレ1世も、退位後にこの地で隠遁生活を送りました。

ダヴィド・ガレジは、その過酷な環境にも関わらず、何世紀にもわたりグルジアの宗教と文化の中心地であり続けました。最盛期には広大な農地や多くの村落を所有し、その内部に描かれたフレスコ画は、時代の変遷を映し出す貴重な資料として、美術的・歴史的観点から高い評価を受けています。11世紀から13世紀にかけてのグルジア王朝の繁栄期には、ダヴィド・ガレジもまた発展を極め、新たな修道院の建立や既存の施設の改修が盛んに行われました。

しかし、モンゴルによる襲来を機に、ダヴィド・ガレジは長い没落の時期を迎えます。その後、王家によって何度か修復が試みられたものの、1615年にはペルシャ軍の攻撃を受け、甚大な被害を受けました。1690年には、修道院長となったオノプレ・マチュダゼのもとで、破壊された貴重な写本や装飾の修復が行われました。

20世紀に入ると、1921年のボリシェヴィキによる占領により、ダヴィド・ガレジは閉鎖され、無人の状態となります。ソビエト・アフガン戦争の時期には、ソビエト軍が軍事演習のキャンプとして利用し、壁面の一部が破壊されるなどの被害を受けました。1987年には作家ダタ・トゥラシュヴィリが率いる学生グループが反対運動を起こし、ソビエト政府は一時的に砲撃演習を停止しましたが、翌年には再開されました。このソビエト軍の行動はグルジア民衆の怒りを呼び、トビリシでの大規模デモや修道院でのハンガーストライキが行われ、最終的にソビエト軍は撤退を余儀なくされました。

1991年の独立後、ダヴィド・ガレジは修道院としての機能を回復しました。しかし、1996年にはグルジア軍がこの地域での軍事演習を開始したため、再び反対運動が組織され、1997年にはNGO団体が砲撃演習の場にテントを張り、軍事演習を妨害しました。結果、この地域での軍事活動は禁止されることとなりました。

現在

現在、ダヴィド・ガレジはグルジアの主要な観光地として、多くの観光客や巡礼者が訪れます。しかし、その一部はアゼルバイジャンの領土内に位置しているため、国境画定の問題を抱えています。2019年にはアゼルバイジャンが自国領内の修道院部分を封鎖し、ジョージアからの訪問は現在も制限されています。この地域は保護動物種の生息地であり、古代人類の居住地としても知られており、その歴史的、文化的、自然的な価値は非常に高いものです。

ダヴィド・ガレジは、その美しい景観と歴史的背景から、グルジアを訪れる人々にとって欠かせない場所となっています。しかし、国境を跨ぐという複雑な事情から、その未来にはまだ多くの課題が残されていると言えるでしょう。

外部リンク

kakheti.net - カヘティ州の情報サイト

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