ダーシー・ド・ネイス男爵

ダーシー・ド・ネイス男爵位の歴史

1332年創設のイングランド貴族の爵位、ダーシー・ド・ネイス男爵位。その歴史は、継承資格をめぐる複雑な争いと、他の爵位との絡み合いによって彩られています。

初代男爵ジョン・ダーシー(没1347年)から始まるこの爵位は、当初は男女両系の相続人に継承が認められていました。しかし、6代男爵フィリップ・ダーシー(没1418年)の死後、爵位は彼の二人の娘の間で相続が停止状態となります。

この停止状態は、1641年にチャールズ1世の決定により解消されました。コンヤーズ・ダーシー(1570-1654年)が7代男爵として爵位を継承、同時にコンヤーズ男爵位も継承を認められたのです。この際、両爵位の継承資格は男系子孫に限定されましたが、貴族院の1903年の裁定により、1641年の特許状は相続停止の解消のみを意図したものであり、継承資格は男女両系相続人のままであると判断されました。

7代男爵の息子、8代男爵コンヤーズ・ダーシーは1682年にホルダーネス伯爵に叙せられます。これ以降、ダーシー・ド・ネイス男爵位はホルダーネス伯爵位の従属爵位となりました。しかし、4代ホルダーネス伯爵(11代男爵)ロバート・ダーシー(没1778年)の死によりホルダーネス伯爵位は廃絶。すると、4代男爵の娘アメリア・オズボーン(1754-1784年)がダーシー・ド・ネイス男爵位を継承すると主張しました。アメリアは短期間リーズ公爵家のフランシス・オズボーンと結婚しており、その息子、第6代リーズ公爵ジョージ・オズボーンが法律上13代男爵となりました。

その後も、リーズ公爵家とダーシー・ド・ネイス男爵位は繋がったままとなりますが、1859年に第7代リーズ公爵フランシス・ダーシー＝オズボーンが亡くなると、両爵位はリーズ公爵位から分離。7代公爵の長女の息子、サックヴィル・レーン＝フォックスが両男爵位を継承を主張しましたが、1888年に彼が死去すると再び相続停止となります。

この相続停止は、コンヤーズ男爵位については1892年、レーン＝フォックスの長女マーシア・ペラムによる継承が認められ解消。一方、ダーシー・ド・ネイス男爵位は、1903年9月29日、レーン＝フォックスの次女ヴァイオレット・ハーバートによる継承が認められ、100年以上の相続停止に終止符が打たれました。

以降、ダーシー・ド・ネイス男爵位は現在に至るまで継承が続けられており、19代男爵カスパー・デイヴィッド・イングラムスが爵位を保持しています。複雑な相続争いと、他の爵位との関係、そして長期間にわたる相続停止と復活劇。ダーシー・ド・ネイス男爵位の歴史は、イギリス貴族の歴史の一断面として、多くの興味深い出来事を物語っています。

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