リーズ公爵

リーズ公爵：イングランド貴族の爵位、その歴史と変遷

リーズ公爵（英語: Duke of Leeds）は、かつて存在したイングランド貴族の公爵位です。初代カーマーゼン侯爵トマス・オズボーンが1694年に叙位されたのに始まり、以降12代にわたって継承されましたが、1964年に継承者が絶えて廃絶しました。

オズボーン家の勃興と爵位の変遷

オズボーン家で最初に称号を得たのは、エドワード・オズボーン(1596-1647)でした。彼はイングランド議会の庶民院議員を務め、1620年7月13日に準男爵位を与えられました。その息子である第2代準男爵トマス・オズボーン (1637-1742) が、目覚ましい昇進を遂げ公爵にまで上り詰めた人物です。彼もまた庶民院議員として政界入りし、1673年にチャールズ2世の信任を得て大蔵卿に任命され、1678年に議会から弾劾を受け失脚するまで国政を主導しました。議会内に与党勢力「宮廷派」を形成することに尽力した人物として知られています。名誉革命にも貢献したため、革命後のウィリアム3世からも重用されました。

その間、彼は数々の爵位を授与され、1673年2月2日にはスコットランド貴族爵位「パース州におけるダンブレーンのオズボーン子爵」、同年8月15日にはイングランド貴族爵位「ヨーク州におけるダンビーのラティマー子爵」と「ヨーク州におけるキヴァートンのオズボーン男爵」、1674年6月27日には「ダンビー伯爵」、1689年4月9日には「カーマーゼン侯爵」、そして1694年3月20日に「リーズ公爵」に叙せられました。初代公の死後、これらの爵位は初代公の男系男子によって継承されていきました。

5代公フランシスとダーシー男爵位、コンヤーズ男爵位

5代公フランシス (1700-1799) は第一次小ピット内閣において外務大臣(在職1783年-1791年)を務めたことで知られています。また、5代公の最初の妻であるアメリア・ダーシーは、議会召集令状によるイングランド貴族爵位である「ネイスのダーシー女男爵」と「コンヤーズ女男爵」を継承していました。そのため、5代公とアメリアの間の子である6代公ジョージ (1755-1838) は、母の死後にこの2つの男爵位を継承しました。

爵位の分離とゴドルフィン男爵位

6代公の死後、その長男である7代公フランシス・ダーシー＝オズボーン (1798-1859) が爵位を継承しましたが、彼には子供がいませんでした。そのため、7代公の死後、リーズ公爵位は5代公の次男である初代ゴドルフィン男爵フランシス (1777-1850) の長男、第2代男爵ジョージ・ゴドルフィン・オズボーン (1802-1872) に継承されました。一方、ダーシー男爵位とコンヤーズ男爵位は6代公の娘の子であるサックヴィル・レーン＝フォックスに継承されました。したがって、8代公以降の当主はダーシー男爵位とコンヤーズ男爵位を持たず、代わりに連合王国貴族爵位「ゴドルフィン男爵」を所持することになりました。

リーズ公爵家の終焉

その後、11代公まで8代公の直系で相続されましたが、11代公ジョン (1901-1963) には娘しかいませんでした。そのため、彼の死後には初代ゴドルフィン男爵フランシスの三男シドニー・ゴドルフィン・オズボーン(1808-1889) の孫であるダーシー・オズボーン(1884-1964) が12代リーズ公爵位を継承しました。しかし、彼も襲爵から1年足らずで子供無く死去しました。他に継承資格者がいなかったため、12代公の死をもってリーズ公爵位と全ての付随爵位が廃絶となりました。

リーズ公爵一覧

初代リーズ公：トマス・オズボーン (1632–1712)
2代リーズ公：ペレグリン・オズボーン (1659–1729)
3代リーズ公：ペレグリン・ハイド・オズボーン (1691–1731)
4代リーズ公：トマス・オズボーン (1713–1789)
5代リーズ公：フランシス・ゴドルフィン・オズボーン (1751–1799)
6代リーズ公：ジョージ・ウィリアム・フレデリック・オズボーン (1775–1838)
7代リーズ公：フランシス・ジョージ・ゴドルフィン・ダーシー・ダーシー＝オズボーン (1798–1859)
8代リーズ公：ジョージ・ゴドルフィン・オズボーン (1802–1872)
9代リーズ公：ジョージ・ゴドルフィン・オズボーン (1828–1895)
10代リーズ公：ジョージ・ゴドルフィン・オズボーン (1862–1927)
11代リーズ公：ジョン・フランシス・ゴドルフィン・オズボーン (1901–1963)
12代リーズ公：フランシス・ダーシー・ゴドルフィン・オズボーン (1884–1964)

参考文献

今井宏(編)『イギリス史〈2〉近世』山川出版社〈世界歴史大系〉、1990年。ISBN 978-4634460201。
坂井秀夫『イギリス外交の源流 小ピットの体制像』創文社、1982年。ASIN B000J7I54W。
* 松村赳、富田虎男『英米史辞典』研究社、2000年。ISBN 978-4767430478。

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