ダービク (機関誌)

イスラム国機関誌「ダービク」とは

「ダービク」（Dabiq）は、イスラム過激派組織「イスラム国」（ISIS）がインターネット上で発行していたPDF形式の機関誌です。主に英語で流布され、欧米諸国からの義勇兵勧誘を目的としていました。機関誌には、高度に編集された画像や戦闘参加への意欲を鼓舞するプロパガンダが多数含まれていました。

概要

2014年7月に創刊された「ダービク」は、シリア北部の町ダービクに由来します。ISISは、この地がイスラム教徒とキリスト教徒の最終決戦の地であると主張していました。トルコ軍の支援を受けた自由シリア軍によってダービクが陥落したことを受け、2016年7月31日発行の第15号で廃刊となりました。その後、ISISは新たな機関誌「ルミヤ」（ローマを意味する）を創刊し、2019年現在までに10号が発行されています。

日本への言及

「ダービク」では、日本についても言及されています。第7号では、アフガニスタン紛争以降の日本の動向について触れ、第11号では、日本を含む60以上の国や機関を「イスラム国を敵対視する十字軍連合」として列挙し、インドネシア、マレーシア、ボスニア・ヘルツェゴビナにある日本の在外公館への攻撃を呼びかけました。

これは、シリアやイラクの支配地域へ渡航できない支持者に対し、具体的な攻撃目標を提示し、「近くにいる敵に対して聖戦を実行せよ」と促すものでした。名指しされた日本大使館はテロ対策の継続を表明し、外務大臣は全在外公館への注意喚起と警備強化を指示しました。

ユダヤ食品店人質事件との関連

「ダービク」第7号では、ユダヤ食品店人質事件の実行犯の妻とされる人物のインタビューが掲載されました。彼女は「アッラーの法によって統治される土地に住むのは良いことだ」と述べ、事件の完遂に安堵していると語っています。ただし、インタビューの信憑性を裏付ける証拠はなく、彼女の生存を確認できる写真も掲載されていません。

同号の表紙にはエッフェル塔の写真が使用され、「私はシャルリー」というプラカードを持つイスラム教徒の写真も掲載されました。機関誌は、欧米に住むイスラム教徒の女性に対し、イスラム国への参加と戦闘員の妻となることを呼びかけました。

欧州難民危機に関する主張

2015年の欧州難民危機に関して、「ダービク」は、イスラム国の支配地域から逃れることは罪であるとし、欧州への移住は子供たちを不貞行為や麻薬などの脅威にさらす行為だと非難しました。

人質の売り出し

第11号では、身代金を要求する広告のような体裁で、ノルウェー人と中国人とされる男性2人の写真が掲載されました。2人は氏名や識別番号が書かれた札を付けられ、職業や生年月日、住所などの情報も記載されていました。また、ページ下部にはイラク国内の電話番号が記載され、「期間限定」との注意書きがありました。中国外務省は事実確認を行うと表明し、ノルウェー首相はテロリストへの屈服や身代金の支払いは行わないと声明を発表しました。しかし、2人は第12号で殺害されたことが明らかにされました。

「ダービク」は、ISISの思想を広め、戦闘員を勧誘するための重要なプロパガンダツールでした。その内容は、暴力的で排他的であり、国際社会に深刻な脅威をもたらしました。

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