ダーリントン保護観察所

ダーリントン保護観察所

ダーリントン保護観察所（Darlington Probation Station）は、1832年にタスマニア州のマリア島に設立された歴史的な建築物です。この施設は主に囚人の住居として使用され、現在も当時の状態を保っています。タスマニアに建設された保護観察所の中でも、ダーリントンは特に注目されており、2010年にはUNESCOの世界遺産リストに「オーストラリアの囚人遺跡群」の一部として登録されました。

歴史的背景

ダーリントン保護観察所の歴史は、いくつかの重要な時期に分けられます。最初の時期は1825年から1830年までの第1期で、この頃は農業や砂岩からのレンガ及び石灰の製造が行われていました。最盛期には、約150人の囚人がこの地に収容されていましたが、1832年にはポート・アーサーに新たな刑務所が開設されたため、ダーリントンは放棄されることになります。脱走の容易さも、この選択に影響を与えたようです。

1842年に保護観察所は再利用され、600人以上の囚人がマリア島に収容されることとなりました。この時期には、下水施設や雨水配水管など、本土にはない先進的な設備が設けられ、さらには農場やコテージ、風車なども建設されました。しかし、1852年には再び放棄される運命を迎えました。

1880年代には、ディエゴ・ベルナッチのビジョンによってマリア島の再活性化が試みられました。彼は保護観察所の残存部分を改装し、住居やホテル、さらには葡萄畑を整備しましたが、1896年にはプロジェクトが頓挫してしまいました。

1920年代に入ると、マリア島は産業化の波に乗ります。セメント工場や高さ60メートルの煙突が建設され、地域経済の発展に寄与しましたが、輸送コストの増大からナショナル・ポートランド・セメント・カンパニーは1930年には撤退。これにより、マリア島の繁栄は一時的なものに終わりました。

その後、1960年代に入ると、マリア島の自然環境が見直される動きが活発化し、1971年にはマリア島国立公園が設立されました。この再評価により、過去の開発で残された建築物が再利用され、結果的に貴重な歴史的遺産が残ることとなりました。

世界遺産の意義

ダーリントン保護観察所は、UNESCO世界遺産の登録基準を満たしています。具体的には、
(4) 人類の歴史上重要な時代を示す建築様式や技術の例
(6) 顕著で普遍的な意義をもつ出来事や文化への関連性
が認められています。これらの理由から、ダーリントン保護観察所はその価値を広く認識されることとなったのです。

このように、ダーリントン保護観察所はただの歴史的な建物ではなく、タスマニアの文化遺産を理解するための重要な場所でもあります。

もう一度検索