ダーレクの勝利

ドクター・フー 第5シリーズ第3話 「ダーレクの勝利」：詳細解説

「ダーレクの勝利」は、2010年4月17日にBBC Oneで初放送された、イギリスのSFドラマ『ドクター・フー』第5シリーズの第3話です。マーク・ゲイティスが脚本を、アンドリュー・ガンが監督を務めました。

ストーリー概要

物語は、第二次世界大戦中のロンドン大空襲時を舞台に展開します。11代目ドクター（マット・スミス）とコンパニオンのエイミー・ポンド（カレン・ギラン）は、ウィンストン・チャーチル首相（イアン・マクニース）と、ブレイスウェル教授（ビル・パターソン）が開発した新型兵器「アイアンサイド」に遭遇します。

チャーチル首相は、この兵器をドイツ軍との戦いに利用しようとしますが、その正体はドクターの宿敵、ダーレクでした。ダーレクはブレイスウェル教授を操り、地球を破壊せんと企んでおり、ドクターとエイミーはダーレクの陰謀を阻止するために奮闘します。

このエピソードでは、従来のダーレクとは異なる、色彩豊かで大型の新型ダーレクが登場するのも特徴です。シリーズ制作総指揮のスティーヴン・モファットは、人気の高いダーレクを第5シリーズに復活させることを望み、チャーチルとダーレクを組み合わせたエピソードの制作をゲイティスに依頼しました。

シリーズとの連続性

「ダーレクの勝利」は、過去のダーレク関連エピソードとの繋がりも示唆しています。例えば、ダーレクのセリフ「私はあなたの兵士です」は、1966年のエピソード「The Power of the Daleks」における「私はあなたのしもべです」というセリフを想起させます。また、ドクターがダーレクの「とどめ」を望む発言は、1967年のエピソード「The Evil of the Daleks」からの直接の引用です。

さらに、ドクターはエイミーとの会話で、過去のダーレクによる地球侵略（「盗まれた地球」「旅の終わり」）に触れ、エイミーがそれらの記憶を持っていないことに疑問を抱きます。エピソードの終盤では、ターディス周辺に時空間の裂け目が確認され、これは後のエピソード「肉体と石」で、エイミーの記憶消失の謎解きに関わることが明らかになります。

製作過程

モファットは、子供たちにも人気の高いダーレクの復活を強く望んでいました。ゲイティスは、モファットからの指示を受け、チャーチルとダーレクを組み合わせたストーリーを執筆しました。彼はチャーチル博物館を訪れ、当時の資料を調査。1966年の「The Power of the Daleks」にも着想を得たものの、フィルムの紛失のため直接視聴はできませんでした。

ゲイティスは、当初ドクター役にマット・スミスがキャスティングされる前に脚本を執筆しており、モファットから3代目ドクターを彷彿とさせる脚本だと指摘を受けました。スミスのキャスティング後、ゲイティスはスミスの演技スタイルを研究し、脚本に反映させました。

ダーレクのデザインは、ゲイティスの指示によって、従来より大型で色彩豊かなものとなりました。ダーレクの声優、ニコラス・ブリッグズは、新しいデザインに合わせて、より邪悪な声を演じました。また、スピットファイア戦闘機が宇宙を飛行するシーンは、実物のレプリカとCGを組み合わせて制作されました。ゲイティス自身も、スピットファイアのパイロットの声としてカメオ出演しています。

放送と反応

「ダーレクの勝利」はイギリスで820万人の視聴者を獲得し、高い視聴率を記録しました。しかし、批評家の評価は賛否両論でした。肯定的なレビューでは、マクニースとパターソンの演技、ドクターとエイミーのキャラクター描写、ダーレクのデザインなどが評価されました。一方、否定的なレビューでは、ペースが速すぎる、ストーリーが薄いなどといった点が指摘されました。

まとめ

「ダーレクの勝利」は、シリーズ定番の悪役であるダーレクを現代風にアレンジし、第二次世界大戦という歴史的背景を巧みに融合させたエピソードです。高い視聴率と記憶に残る場面、そして賛否両論の評価は、このエピソードが多くの視聴者に強い印象を与えたことを示しています。 様々な解釈が可能な点も、このエピソードの大きな魅力と言えるでしょう。 シリーズの歴史を踏まえた伏線や、過去作へのオマージュも散りばめられており、シリーズファンにも満足できる内容となっています。

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