チェルメリュ鉄道

スロバキア東部に位置するコシツェ県にあるチェルメリュ鉄道は、正式名称を「コシツェ子供歴史鉄道」と称し、「子供鉄道」や「コシツェ子供鉄道」とも呼ばれています。この鉄道は、かつてのチェコスロバキアにおいて初めて子供たちのために開設された、歴史ある狭軌鉄道路線です。

概要

この鉄道は、社会主義時代にあたる1956年にその歴史をスタートさせました。コシツェ市西街区の郊外に広がるチェルメリュ渓谷に沿って敷設されており、全長約4.2キロメートルの路線全体が、二級道路である547号線（チェルメリュ街道）と並行して走っています。軌間は1,000ミリの狭軌を採用しています。沿線には、起点のチェルメリュ駅（チェルメリュ=バラーノク）、ウプレト停留場（チェルメリュ=ヴォダールカ）、そしてアルピンカ駅の合計3つの駅・停留場が設けられており、起点のチェルメリュ駅には車両基地も併設されています。

現在の運営体制は、スロバキア国鉄（ŽSR）が線路などの施設を所有し、非営利団体である市民協会「コシツェ子供鉄道」が車両の管理と実際の列車運行業務を担っています。また、コシツェ市の交通事業者であるコシツェ市交通企業株式会社（DPMK）が、路線の維持管理（保線）と乗車券の販売業務を担当するという、三者による協力体制が築かれています。

民主化後の時期には一時的に子供たちによる運営活動は行われていませんでしたが、市民協会への運営移管が完了した2012年からは、大人のスタッフの指導のもと、再び子供たちが運営スタッフとして参加する体制が復活しました。現在は、例年4月下旬から11月上旬にかけての週末を中心に列車が運行されていますが、運営する市民協会は将来的には年間を通じて運行することを目標としています。

この路線は、スロバキア国鉄の他の路線とは接続していませんが、コシツェ市街中心部にあるミエルバス停留場とチェルメリュ街道沿いを結ぶDPMKの路線バス14番系統が、この鉄道へのアクセス手段として利用されています。バスの片道所要時間は約22分です。

歴史

チェルメリュ鉄道の建設は、鉄道労働者の子供たちの育成を目的として、コシツェの国鉄退職者や当時のチェコスロバキア国営自動車交通（ČSAD）、そしてコシツェ市交通企業の主導により進められました。1955年 4月17日に着工し、翌1956年 5月1日には、現在のチェルメリュ駅からアルピンカ駅にあたるピオニエル駅までの区間が開業しました。その後、1973年から1975年の3年間は運行が中断された時期もありましたが、1986年から1987年にかけては大規模な路線の補修工事が実施されました。

1990年の民主化以降は、子供たちによる運営は一旦終了しました。連邦制解消後は、チェコスロバキア国鉄からスロバキア国鉄（ŽSR）へと施設が移管されました。さらに2001年には、スロバキア国鉄の組織再編に伴い、施設所有と運行業務が分離され、旧ZSSK（後の鉄道企業体スロバキア株式会社）が車両保有・運行を、コシツェ市交通企業株式会社（DPMK）が保線と乗車券販売を担う体制へと移行しました。

開業50周年を迎える直前の2006年春には、発生した洪水により路線全体が大きな被害を受けました。その復旧工事のため、同じ1000mm軌間を持つスロバキア国鉄タトラ電気鉄道（TEŽ）から、保線作業用のホッパー貨車1両が譲り受けられました。

2011年には、鉄道の活性化と地域振興を目的として、ZSSKから車両と列車運行業務が市民協会「コシツェ子供鉄道」に移管されることが決定し、2012年から市民協会による運営が始まりました。この移管を機に、社会主義時代と同様に、大人の指導のもと子供たちが運営に参加する体制が復活し、運行期間も従来の5月1日から9月中旬までから、4月下旬から11月上旬までと拡大されました。そして、2013年には路線の正式名称が「コシツェ子供歴史鉄道」へと改称されました。

車両

チェルメリュ鉄道には、開業当初はU35.104とU36.004の2両のタンク式蒸気機関車が配置されていましたが、1965年にディーゼル機関車T29.002（後のTU29.0002、愛称「ヤンカ」）とT29.003（後のTU29.0003、愛称「ダンカ」）に置き換えられました。さらに1991年 7月には、特別な機関車が加わりました。それは、チェコスロバキアに現存する最古の蒸気機関車とされるU36.003（1884年製、愛称「カトカ」）です。この機関車は、コシツェ県スピシュスカーノヴァーヴェス市の国鉄機関区で保存されていたものが、チェコでの復元工事を経て当鉄道に配属されたものです。

「カトカ」ことU36.003は、元々は当鉄道から約20キロメートル西にあったゲルニツァ－スモルニーク鉄道（全長26km）のために製造された機関車です。チェコスロバキア国鉄に編入後、第二次世界大戦前後に一時、フロンスカーブレズニツァ－バンスカーシュチアウニツァ鉄道線（現スロバキア国鉄線、1949年改軌）で使用された後、1949年にゲルニツァ線に戻されました。1965年に同線が廃止された後、所属機関区で保存されていました。ボイラーの不調により1993年以降使用できなくなりましたが、1996年に再び修繕され、同年5月7日に運行に復帰しました。

2017年には、新たな蒸気機関車U29.101（愛称「クルトヴィッヒ」）が入線しました。この機関車は、1957年にČKDソコロヴォ国営会社が製造した産業用蒸気機関車で、戦前のドイツの設計を基に戦後チェコスロバキア国内向けに多数製造されたうちの1両です。チェコ国内の炭鉱で使用された後、博物館で保存・復元され、当鉄道に譲渡されました。

客貨車としては、客車5両（うち屋根のない開放形が3両）と緩急車2両が所属しています。これらの車両はいずれも、19世紀から20世紀初頭にかけて国内の1000mm軌間鉄道で使用されていたものを修復・復活させたものです。客車は「カトカ」と同じゲルニツァ－スモルニーク鉄道線で、緩急車はフロンスカーブレズニツァ－バンスカーシュチアウニツァ鉄道線でかつて活躍していた車両です。2013年 5月25日には、子供向けのイベントに合わせて、これらの客貨車の全てに愛称が付けられました。

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