チェロソナタ第2番 (ブラームス)

チェロソナタ第2番 ヘ長調 作品99

ヨハネス・ブラームスが作曲した2番目のチェロソナタ、ヘ長調 作品99は、作曲者の創作後期の初期にあたる1886年に完成されました。この作品は、第1番のチェロソナタからおよそ21年もの歳月を経て書かれており、作曲当時、ブラームスは既に第1番から第4番までの全ての交響曲を書き終えていました。これは、作曲家の円熟期における室内楽作品として位置づけられます。

作曲の背景

ブラームスは、夏の間を避暑地で過ごし、そこで集中的に創作に取り組むことを常としていました。1886年から1888年にかけての夏、彼は友人であり詩人のヨーゼフ・ヴィクトール・ヴィトマンの勧めにより、スイスの美しいトゥーン湖畔で過ごしました。このトゥーン滞在はブラームスにとって実り多く、ヴィトマンの邸宅を拠点に、このチェロソナタ第2番をはじめ、ヴァイオリンソナタ第2番 イ長調 作品100やピアノ三重奏曲第3番 ハ短調 作品101など、後期室内楽の傑作が次々と生み出されました。ヴィトマン自身がチェロを巧みに演奏する人物であったことから、彼との交流がこのチェロソナタの作曲に何らかの示唆を与えた可能性も考えられています。静かで美しい湖畔の環境と、理解ある友人との親密な交流が、作品のインスピレーションとなったのかもしれません。

楽曲の性格

チェロソナタ第2番は、先行する第1番ハ短調 作品38と比較されることがよくあります。やや抑制された厳しさをたたえ、陰影に富む第1番に対し、第2番は全体的により明るく、力強く情熱的な性格を持っています。その規模も第1番よりも拡大されています。また、第1番と同様に、この作品でもピアノパートは単なる伴奏にとどまらず、チェロと対等に、時には主導権を握るほど重要な役割を担っています。ピアノには高度な技巧が要求され、チェロとの間の緊密な対話や絡み合いが、このソナタの大きな魅力となっています。

構成

作品は全4楽章で構成されており、全楽章を演奏するのに要する時間は約30分です。

第1楽章：アレグロ・ヴィヴァーチェ
ヘ長調、4分の3拍子。ソナタ形式。力強く推進力のある主題で開始されます。

第2楽章：アダージョ・アフェットゥオーソ
嬰ヘ長調、4分の2拍子。三部形式。深く情感豊かな緩徐楽章です。主部と対照的な中間部が挟まれます。

第3楽章：アレグロ・パッショナート
ヘ短調、8分の6拍子。三部形式。スケルツォ風の性格を持ちながらも、情熱的で劇的な要素を含んでいます。中間部はヘ長調となります。

第4楽章：アレグロ・モルト
ヘ長調、2分の2拍子。ロンド形式。快活で勢いのあるロンド主題が繰り返され、華やかに終結します。

このソナタは、ブラームス後期の室内楽における重要な位置を占め、チェロとピアノの豊かな響きと対話を通して、作曲家円熟期の境地を深く味わうことのできる作品と言えるでしょう。

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