チェロ協奏曲第2番 (ハイドン)

チェロ協奏曲第2番 ニ長調 Hob. VIIb:2

フランツ・ヨーゼフ・ハイドンが1783年に作曲したチェロ協奏曲第2番ニ長調 作品101 Hob. VIIb:2は、彼のチェロ協奏曲の中でも特に重要な位置を占める作品です。この曲は、1961年に第1番の筆写譜が発見されるまで、ハイドンが作曲した唯一のチェロ協奏曲として広く認識されていました。

作品の位置づけ

ハイドンは生涯に6曲のチェロ協奏曲を作曲したと伝えられますが、現在真作と認められ頻繁に演奏されるのは、この第2番と第1番（ハ長調 Hob. VIIb:1）の二つのみです。他の作品の一部は紛失したり、後世の研究で他の作曲家（第4番はG.B.コンスタンツィ、第5番はD.ポッパー作とされる）の作品であることが判明したりしています。現存するハイドンのチェロ協奏曲の中で、規模や内容から第1番と第2番が傑出しており、一般に「ハイドンのチェロ協奏曲」と言う場合、通常この二作品を指します。これら真作とされる二つのチェロ協奏曲は、ハイドンがハンガリーのエステルハージ侯爵家に楽長として仕えていた時代（1761年から1790年）に作曲されました。

作曲の背景と献呈説の否定

このチェロ協奏曲第2番は、かつてエステルハージ家のチェロ奏者アントン・クラフトのために書かれたと考えられていました。しかし、近年の音楽学的な研究はこの説を否定しています。一時、クラフトの息子ニコラウスが父を真の作曲者だと主張し偽作説も流布しましたが、決定的な証拠として1954年にハイドン自身の自筆譜が発見され、作品が間違いなくハイドンの真作であることが証明され、偽作説は完全に払拭されました。

楽器編成

この作品の楽器編成は、自筆譜が発見される前と後で認識が大きく変わりました。長らく一般的とされた独奏チェロ、オーボエ2、ホルン2、弦五部という編成は、当時の出版譜に記されていたもので、これは出版社の不十分な考証に基づくものでした。自筆譜によると、実際の編成は独奏チェロに加えて、オーボエ2、ホルン2、第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、そしてバス（ファゴットとコントラバス）です。当時の弦楽パートは現代と異なり「弦五部」という明確な概念は一般的ではありませんでしたが、弦楽パートが5声部に独立した早い例の一つと考えられています。なお、エステルハージ楽団の弦楽器奏者数は時期により変動的でした。

自筆譜が示す演奏上の詳細

自筆譜には演奏上の重要な指示が含まれており、発見によって初めて理解されました。例えば、第3楽章の主題に付された「solo」は独奏チェロのみが演奏することを、「Bassi」はバスパート全体を指します。第1楽章と第3楽章のバスパートの鉤付き音部記号はコントラバスのような1オクターヴ低い楽器を含むことを示唆する一方、第2楽章のバスは実音で記されているためコントラバスは使われずファゴットが担当します。

楽章構成

本作品は全3楽章から構成され、全体の演奏時間は約25分です。

第1楽章：アレグロ・モデラート
ニ長調、4分の4拍子。オーケストラ提示部と独奏提示部を持つ、協奏風ソナタ形式で書かれています。

第2楽章：アダージョ
イ長調、4分の2拍子。ロンド形式。この楽章では、コントラバスとホルンが省略されています。

* 第3楽章：ロンド：アレグロ
ニ長調、8分の6拍子。快活なロンド形式で締めくくられます。

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