チェーンレンチ

チェーンレンチとは

チェーンレンチ（chain pipe wrench）は、チェーントングや鎖パイプレンチとも呼ばれる工具です。主に、太いパイプの締め付けや、ボーリング（鑿泉）におけるロッドの接合などに使用されます。その特徴は、チェーンを用いて対象物を把持し、回転させる点にあります。

構造と使用方法

チェーンレンチの使用方法は以下の通りです。

1. チェーンをパイプに少し緩めに巻き付けます。
2. チェーンの両端にあるピンを本体の溝部に引っ掛けます。
3. レンチ本体を手前に引き気味にし、頭部の歯部（ジョー）をパイプに引っ掛けます。
4. チェーンがパイプに巻きつく方向にレンチを回すと、歯がパイプに食い込み、チェーンが張られてパイプを保持・回転させることができます。

この構造により、円形状の対象物だけでなく、四角や三角などの変形物も確実につかむことが可能です。

歯の形状

チェーンレンチの歯は、日本製のものは片方向に使用する片歯が一般的ですが、欧米のタイプでは両方向に回転可能な二つの歯が反対方向に付いているタイプが主流です。これにより、レンチを付け替えることなく、締め付けと弛め作業を効率的に行うことができます。

メーカーと脱落防止機構

日本の主なメーカーとしては、ヒット(HIT)、[スーパーツール]、松阪鉄工所(MCC)などがあります。チェーンレンチの最大の欠点の一つとして、使用方向やラチェット操作の繰り返しによってチェーンが本体から外れる可能性がある点が挙げられます。チェーンが外れると重大な事故につながる危険性があるため、各メーカーはチェーンが容易に外れないよう、脱落防止機構を導入しています。この機構は、1973年にHITが国内で初めて開発し、その後SUPER TOOLも商品化しました。

使用上の注意点

チェーンレンチは、歯がカム形状であるため、特に小口径の中空丸形状の配管用パイプを締め付ける際に過大なトルクを加えると、パイプを変形させてしまうことがあります。パイプレンチの場合はフレームにストッパー機能があり、管への一定の噛み込みで動きが停止しますが、チェーンレンチは締め付けトルクと管の強度との力学バランスで噛み込みが停止します。そのため、管の接合部付近でチェーンレンチを使用する際は、継手との管端ネジ部から漏れが発生する可能性があるため、継手推奨締め付けトルクでの接合に注意が必要です。

その他の情報

J.H.Williams: 1884年創業の工具メーカーで、現在はSnap-onの傘下です。

参考文献

全国作業工具工業組合『正しい作業工具の使い方』p26
THOMAS DUTTON 『THE HAND TOOLS MANUALl』p100 TSTC Publishing

関連項目

ローラーチェーン
工具
工具メーカーの一覧

外部リンク

1920年登録、USA Pat No.1327309 片歯タイプ
1933年登録、USA Pat No.1933512 両歯タイプ
POPSCI 1948年 March p239パイプレンチを改造したチェーンレンチの原点的使い方
POPSCI 1958年 August StillsonのChain pipe wrench
* POPSCI 1965年 October P202 RIDGIDのCHAIN WRENCH広告

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