チクラーヨ

ペルー北西部、太平洋に面した場所に位置するチクラーヨ（Chiclayo）は、ランバイエケ県の県都であり、活気にあふれる商業都市です。2021年時点での人口は64万人を超え、近年その姿を急激に変える目覚ましい近代化を遂げている都市の一つです。

歴史

チクラーヨとその周辺地域は、古くから高度な文明が栄えた地として知られています。特に西暦700年頃から1375年頃にかけて、この地域にはランバイエケ文化（別名シカン文化）が栄えました。ランバイエケ文化は、先行するモチェ文化から多くの知識や伝統を受け継ぎつつ、独自の発展を遂げた文明です。特に注目すべきは、彼らが達成した建築技術と、精巧な黄金製品に代表される宝飾技術です。これらの分野においては、モチェ文化を凌駕したとも評価されています。最盛期は西暦900年から1100年頃で、その影響はペルーの海岸地帯全体に及んだとされています。現在のチクラーヨも、このランバイエケ文化の広大な文化圏の一部でした。

スペイン植民地時代初期の16世紀、この地にはシント族とコリケ族という二つの先住民グループが暮らしていました。彼らの指導者たちは、フランシスコ会修道院に土地を寄進することを決め、この修道院が建設されたことを契機として、チクラーヨの町が形成されていきました。リマやアレキパといった他の主要な植民都市とは異なり、チクラーヨはスペイン人入植者よりも先住民の人口比率が高いという特徴を持っていました。

やがて近代に入り、チクラーヨは発展を続け、1835年4月15日に市として正式に認められました。現代においては、商業都市としての発展に加え、近郊での重要な考古学的発見によって世界の注目を集めています。特に、1987年に市の南東約30kmにあるシパン遺跡で発見されたモチェ文化の支配者、「シパン王」の墓は、南米における最も重要な考古学的発見の一つとされ、この地域の古代史研究に革命をもたらしました。

観光

チクラーヨとその近郊には、古代ペルーの豊かな歴史を物語る重要な遺跡や博物館が点在しており、多くの観光客を惹きつけています。主要な観光スポットとしては、以下が挙げられます。

シパン遺跡とシパン王墓博物館: 1987年に発見されたモチェ文化の「シパン王」の墓は、豪華な副葬品とともに発見され、当時の社会構造や技術を知る上で非常に重要です。遺跡と出土品を展示する博物館があります。
トゥクメ遺跡: 多数の日干し煉瓦製ピラミッドが広がるこの遺跡は、ランバイエケ文化末期からインカ時代にかけての宗教・儀式の中心地でした。広大な敷地に点在するピラミッド群は圧巻です。
シカン博物館: 主にランバイエケ文化（シカン文化）に焦点を当てた博物館で、この文化の社会構造、宗教、精巧な金属加工技術などを深く理解するのに役立ちます。黄金製品などの展示が有名です。
ブルーニン博物館: ランバイエケ地方全体の先コロンブス期の文化遺産を幅広く展示しており、モチェ文化、ランバイエケ文化、チムー文化など、この地域に栄えた様々な文明を知ることができます。

これらの遺跡や博物館は、ペルー北部の古代文明の謎を解き明かす重要な鍵を提供しています。

文化と交流

チクラーヨでは、サッカークラブ「フアン・アウリチ」のようなスポーツ活動も盛んです。また、ペルー国内のアレキパやフアンフイに加え、日本の札幌市、イギリスのイプスウィッチ、韓国のソンナム市、アルゼンチンのバンフィールド、エクアドルのロハやクエンカ、ベネズエラのボコノといった、世界の複数の国や都市と姉妹都市・提携関係を結んでおり、国際的な交流も積極的に行われています。

まとめ

商業の中心地として近代化が進むチクラーヨは、同時に古代の栄光を今に伝える歴史と文化の重要な拠点でもあります。近郊に点在する数々の遺跡や博物館は、ペルー北部の豊かな古代史を学ぶ上で欠かせない場所となっています。活気ある現代生活と深遠な歴史遺産が共存するこの都市は、ペルー北部を訪れる人々にとって魅力的な目的地です。

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