チシマウガラス

チシマウガラス（千島鵜鴉）

チシマウガラス（学名: Urile urile）は、カツオドリ目ウ科に属する特異な鳥であり、主にアメリカ合衆国のアラスカ州南部、日本の北海道東部、そしてロシアの太平洋沿岸に分布しています。この種は、全長が76〜89cm、翼開張は110〜122cmに達する大型の海鳥です。

特徴と形態

一般的にチシマウガラスは全身が光沢のある黒い羽毛で覆われ、その外観がカラスに似ていることが和名の由来とされています。嘴は灰白色で、幼鳥は褐色の羽毛を持ちます。特に夏季には嘴の基部を含む顔が羽毛に覆われず、赤い皮膚が露出していることから、英名の「red-faced（赤い顔）」が与えられました。また、夏羽では頭部に冠羽が見られ、後肢の基部には白い斑紋が確認できます。冬になると顔には羽毛が復活し、冠羽も目立たなくなります。

分類

かつてチシマウガラスはウ属（Phalacrocorax）に分類されていましたが、近年の遺伝子研究によってヒメウ属（Urile）に再分類されました。これは進化的な関係を探求する上で重要な進展であり、鳥類の分類学における理解を深めています。

生態

チシマウガラスは主に岩礁海岸に生息し、その食性は動物食であるため、主に魚類を捕食します。繁殖にあたっては、5月から6月にかけて海岸の断崖に、枯草や木の枝を使った巣を作り、1回に1〜4個の卵を産むのが一般的です。雌雄ともに抱卵し、抱卵期間は約21日。この時に巣立つ雛は、孵化から約2か月後に独り立ちします。

人間との関係

チシマウガラスは人間による影響で生息数が減少しています。特に繁殖地への人間の接近や、オオセグロカモメによる卵や雛の捕食がその要因として挙げられます。1980年代以降、日本における営巣ペアの数が激減し、北海道の落石岬などでの営巣の確認がされていない状況です。1993年には、種の保存法施行により、国内希少野生動植物種に指定されています。

チシマウガラスは、環境省のレッドリストで絶滅危惧IA類（CR）に分類されています。このことは、種の存続に対する強い警鐘を鳴らしており、保全活動の重要性を再認識する機会となっています。たゆまぬ努力が必要とされる貴重な生物であり、その存在を守ることは私たちの責務です。

参考文献

• - 安部直哉著 『山渓名前図鑑 野鳥の名前』、山と渓谷社、2008年
• - 桐原政志著 『日本の鳥550 水辺の鳥』、文一総合出版、2000年
• - 環境省『絶滅危惧種情報』

この特異な鳥の魅力を理解し、次世代に伝えるために、私たちができることを考え、行動していくことが求められています。

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