ウ科

ウ科（鵜科）

ウ科（Phalacrocoracidae）は、カツオドリ目に分類される水鳥のグループです。世界中の様々な環境に適応した種が存在し、水辺の生態系において重要な役割を果たしています。

名称

漢字の「鵜」は、中国では元来ペリカンを指していました。日本で「う」という訓読みが与えられましたが、本来ウを意味する漢字は「鸕」です。

分布

ウ科の鳥類は、アフリカ、オーストラリア、北アメリカ、南アメリカ、ユーラシアといった広範囲な大陸、そしてインドネシア、日本、ニュージーランドなど、世界中の様々な地域に分布しています。主に温帯や熱帯の河川、湖沼、海岸などに生息しますが、ヒメウのように寒帯に分布する種も存在します。

形態

ウ科の鳥は、全長45cmから101cmと種によって大きさが異なります。羽の色は、黒や黒褐色、緑色の光沢がある褐色などが多いですが、下面が白い種もいます。羽毛は水が浸水しやすい構造になっているため、素早く潜水することができます。翼は比較的小型で幅広く、水中での抵抗を減らし、泳ぎに適した形状をしています。ガラパゴスコバネウのように、翼が退化して飛べない種も存在します。

嘴は長く、上嘴の先が鉤状に尖っており、側面には鋸状の突起があります。これにより、捕らえた獲物を逃がしにくくなっています。頭骨の基部には独特な形状の骨があり、上下の嘴を別々に素早く動かすことができます。喉の皮膚は袋状に伸びますが、発達は控えめです。この喉の袋には毛細血管が集まっており、膨らませて震わせることで外気に冷やされ、体温を下げる役割を果たすと考えられています。また、獲物を飲み込む際に、向きを変えて飲み込みやすくするのにも役立つと考えられています。全身の筋肉には血管が密に走り、大量の血液が流れるため、酸素を効率的に取り込むことができ、長時間の潜水に適応しています。脂肪は少なめです。後肢は胴体の後方に位置し、互いに近接しています。そのため、陸上での歩行は得意ではありませんが、水中では発達した大腿部の筋肉により、大きな推進力を得ることができます。4本の趾の間には水かきが発達しています（全蹼足）。

分類

かつてはペリカン目に分類されていましたが、現在ではヘビウ科、カツオドリ科、グンカンドリ科とともにウ目（Phalacrocoraciformes）に分離する説が有力です。系統分類においては、ウ科内部にも未解明な点が多く、分類は研究者によって異なります。

現在、IOC World Bird Listでは Phalacrocorax、Leucocarbo、Microcarbo の3属に分割されています。

生態

ウ科の鳥は、脂肪が少ないため、主に熱帯域に生息し、高緯度地方では少ない傾向があります。泳ぐ際には翼を胴体に密着させ、後肢を使って推進します。羽毛は水が浸水しやすいため、潜水後には翼を広げて乾かす行動をよく見かけます。

食性は動物食で、水中に潜って魚類、甲殻類、軟体動物、貝類などを捕食します。飛翔時には、頸を伸ばして水面近くを直線的に飛びますが、長距離を移動する際には隊列を組んで高く飛ぶことがあります。

多くは集団繁殖地（コロニー）を形成し、沿岸や島の断崖、あるいは内陸の樹上に営巣します。2-5個の卵を産み、雌雄で抱卵し、雛を育てます。

人間との関係

ウ科の鳥は、かつて漁業に利用されていましたが、現在では一般的ではありません。日本では少なくとも5世紀以降、ヨーロッパでは17世紀以降には、ウ科の鳥を用いた漁法（鵜飼）が行われていました。現在でも、日本や中国では観光目的で鵜飼が行われることがあります。また、一部の地域では、コロニーに堆積した糞が肥料（グアノ）として利用されています。

一方で、魚類を捕食するため、漁獲物を食害する害鳥とみなされることもあります。開発や人為的に移入された動物によるコロニーの破壊、漁業による混獲、害鳥としての駆除などにより、生息数が減少している種もいます。

鵜飼

鵜が口にした魚は噛まずに丸呑みにすることから、「鵜呑みにする」という言葉が生まれました。この習性を利用した漁法が鵜飼で、インド以東のアジアで行われています。鵜飼は、魚の体を傷つけずに漁ができるだけでなく、魚の旨味を損なわずに漁獲できるという利点があります。日本では、5〜6世紀の古墳から鵜飼の様子を表した埴輪が出土しており、古くから行われていたことがわかります。

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