チゼータ・V16T

チゼータ・モロダー V16T：伝説のスーパーカー

チゼータ・モロダーV16Tは、イタリアの自動車メーカー、チゼータが製造した稀少なスーパーカーです。その名は、搭載された6.0L V型16気筒DOHCエンジンの特徴的なレイアウトに由来します。この巨大なエンジンはミッドシップに横置きされ、縦置きのトランスミッションと組み合わせることで「T」字型を形成しており、これがモデル名「V16T」の「T」となっています。

驚異的な動力性能

V16Tのパワーユニットは、まさにモンスター級。その圧倒的な出力により、0-100km/h加速は4.4秒、最高速度は328km/hに達します。この驚異的なパフォーマンスは、多くのスーパーカーファンを魅了する要因の一つとなっています。エンジンは、ランボルギーニ・ウラッコに搭載されていた3.0L V8エンジンの2基を改良、合体させたという噂も流れていましたが、公式には否定されています。しかしながら、ランボルギーニ出身の技術者が開発に携わっていたことは事実であり、その技術的系譜を感じさせるスペックとなっています。

独創的なデザインと豪華な装備

V16Tのエクステリアデザインは、著名なデザイナー、マルチェロ・ガンディーニの手によるものです。そのスタイリングは、ランボルギーニ・ディアブロのプロトタイプデザインにも通じるものがあると噂され、特に上下二段式のリトラクタブルヘッドライトは、その特徴的なデザインを一層際立たせています。リアセクションは、巨大なV16エンジンを搭載したために非常にワイドになり、全幅は2mを超えています。ボディはオールアルミニウム製で、軽量かつ高剛性を実現しています。また、テールランプはアルピーヌ・A610からの流用という、意外な要素も含まれています。

インテリアは高級感溢れる空間です。上質なレザーインテリアと高級オーディオが装備され、ドライバーとパッセンジャーに快適なドライビング体験を提供します。足回りにはブレンボ製のブレーキシステムと、ピレリの当時の最高級タイヤが採用されるなど、細部までこだわり抜かれた仕様となっています。

短命に終わった生産と復活

V16Tは1989年に発表され、大きな注目を集めました。一台60万ドルという高価格にも関わらず、1992年から月1台のペースで生産が開始されました。しかし、様々な事情により生産は難航し、チゼータ社の倒産によってわずか8台（後に15台に訂正）の生産で幕を閉じました。日本には2台が輸入され、そのうちの1台は河口湖自動車博物館で展示されています。

しかし、V16Tの伝説はそこで終わらなかったのです。現在では、「チゼータ・オートモービル・USA」によって受注生産が再開されています。かつて一世を風靡したスーパーカーが、再び世界中のコレクターを魅了し続けています。この希少なスーパーカーは、そのパフォーマンス、デザイン、そして歴史的背景から、まさに伝説と呼ぶに相応しい存在と言えるでしょう。

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