マルチェロ・ガンディーニ

マルチェロ・ガンディーニ：自動車デザイン界の巨匠

マルチェロ・ガンディーニ (1938年8月26日-2024年3月13日) は、イタリアを代表するインダストリアルデザイナーであり、特に自動車デザインにおいて世界的な名声を博しました。その才能は自動車にとどまらず、インテリア、建築、工業製品、さらには航空機デザインまで多岐に渡り、類まれな創造性を発揮しました。

ベルトーネ時代と代表作

ガンディーニは、名門カロッツェリア「ベルトーネ」でチーフデザイナーを務めたことで知られています。1965年、ジウジアーロの後任としてベルトーネに迎えられた彼は、数々の伝説的な自動車デザインを生み出しました。中でも、スーパーカーブームを象徴するランボルギーニ・カウンタックは、彼の代表作として広く知られています。その特徴的なウェッジシェイプのボディ、シザードア、そしてリアホイールアーチ上部の斜めのカットは、後のスーパーカーデザインに大きな影響を与えました。

ランチア・ストラトスのようなWRCで活躍したレーシングカーのデザインも手掛け、スポーツカーのみならず、実用的なファミリーカーや商用車デザインにも携わった彼は、技術的な知識にも長けたデザイナーとして高く評価されていました。ベルトーネ時代には、ランボルギーニ・ミウラ、アルファロメオ・カラボ、ジャガー・ピラーナといった革新的なデザインを生み出し、その奇抜さと斬新さで人々を魅了しました。これらのデザインには、過去のレーシングカーやスポーツカーのデザイン要素を巧みに取り入れ、自身の創造性を融合させている特徴がありました。ガンディーニは、ジュネーブモーターショーで発表されたガルミッシュやジャガーFTのデザインを通じて、後のBMW 5シリーズにも影響を与えたと言われています。さらに、アウトビアンキ・ラナバウト・バルケッタのデザインはフィアットX1/9へと発展し、そのデザイン要素はランチア・ストラトスやランボルギーニ・カウンタックにも見られます。

フリーランスとしての活躍と晩年

1979年、ベルトーネを退社したガンディーニはフリーランスのデザイナーとして独立。ルノーとの独占契約を経て、その後も精力的に活動を続けました。デ・トマソ・パンテーラのリデザイン、マセラティ・シャマル、クアトロポルテなど、数々の名車のデザインに携わりました。ランボルギーニ・ディアブロやブガッティ・EB110のデザインも依頼されましたが、経営陣との意見の相違から、最終的なデザインには他社の修正が加えられています。晩年はトヨタ、三菱、スバルなどにも携わり、コンサルティング事業にも取り組んでいました。

ガンディーニのデザインの特徴として、リアホイールアーチ上部の斜めのカットが挙げられます。この特徴は、彼のデザインにおける一貫性と、独特のスタイルを示すものです。また、彼は自動車だけでなく、オフィス家具や小型ヘリコプターのデザインも手掛け、その才能は多様な分野に及んでいました。

教育と影響

ガンディーニは、カーデザイナーになるという強い意志のもと、親の反対を押し切って大学進学をせず、独学でデザインを学びました。当時のイタリアにはデザイン専門の学位コースがなかったため、彼の才能は独学によって磨かれたものです。しかし、その才能と功績は高く評価され、2024年にはトリノ工科大学より機械工学の名誉学位を授与されました。これは、彼の生涯における大きな功績の一つと言えるでしょう。普段の足にはスズキ・ワゴンR（欧州仕様）を愛用していたというエピソードからも、彼の機能性に対するこだわりがうかがえます。

2024年3月13日、ガンディーニは85歳でこの世を去りました。彼の残した数々の名車は、これからも人々を魅了し続け、自動車デザイン史に大きな足跡を残すことでしょう。彼の功績は多くの書籍や文献資料にも記されており、彼のデザイン哲学や創造性を探求する上で貴重な資料となります。彼の死は、自動車デザイン界に大きな損失をもたらしましたが、彼の功績は未来のデザイナーたちにも影響を与え続けるでしょう。

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