チタン酸リチウム二次電池

チタン酸リチウム二次電池：高い安全性と急速充電を両立した次世代蓄電池

チタン酸リチウム二次電池は、リチウムイオン電池の一種であり、従来の黒鉛などの可燃性炭素系材料に代えて、チタン酸リチウム（LTO）を負極材として採用した電池です。この点が、チタン酸リチウム二次電池の大きな特徴であり、数々の利点をもたらしています。

セラミック素材とリチウム金属析出抑制による高い安全性

チタン酸リチウムはセラミック素材であり、リチウム金属の析出が起こりにくいため、従来のリチウムイオン電池で懸念される内部短絡（ショート）のリスクが大幅に低減されます。リチウム金属がセパレータを貫通して正極と接触することで発生する内部短絡は、電池の故障や発火につながる危険性があるため、安全性の向上は大きなメリットです。

高速充電と長寿命

チタン酸リチウム二次電池では、アノードにチタン酸リチウムナノ結晶を用いることで、表面積を大幅に増加させます。これにより、電子がアノードに出入りしやすくなり、急速充電が可能になります。従来のリチウムイオン電池と比較して、充電時間を大幅に短縮できる点が大きな利点です。さらに、寿命も3000～7000サイクルと長く、長期間にわたって安定した性能を発揮します。

低い固有電圧と比エネルギー

一方で、チタン酸リチウム二次電池は、固有電圧が2.4Vと、従来のリチウムイオン電池の3.7Vと比べて低いため、比エネルギーも30～110Wh/kgと低いという欠点があります。比エネルギーとは、電池の重量あたりのエネルギー容量を示す指標であり、低い数値は、同じエネルギー容量を得るためにより大きな電池が必要となることを意味します。しかしながら、177Wh/Lというエネルギー密度を有することが報告されており、体積あたりのエネルギー容量は比較的高いと言えます。

多様な用途への展開

チタン酸リチウム二次電池の高い安全性と急速充電性能は、様々な分野で注目されており、既に実用化が進んでいます。

電気自動車: 三菱自動車のi-MiEV（Mタイプ、日本版のみ）など、一部の電気自動車に採用されています。
公共交通機関: 海外では、高速充電能力を活かし、電気バスへの搭載が進んでいます。乗客の乗降時間中に短時間で充電できるため、運行効率の向上に貢献します。
モバイル機器: 安全性の高さを評価され、モバイル医療機器などにも使用されています。

主要メーカーと採用事例

複数のメーカーがチタン酸リチウム二次電池を製造・販売しており、その用途は多岐に渡ります。

Altairnano: バッテリー式電動輸送機器を中心に、電気自動車やバス、グリッド補助サービスなど、幅広い用途で採用されています。
Leclanché: 3.2kWh、20,000サイクルの「TiBox」などを市場に投入しています。
Microvast: 超高速充電バスへの採用実績があり、世界的なシェアを誇ります。中国の高速充電バスや、イギリスの二階建てバスなど、大規模な導入事例があります。
東芝: 「SCiB」と呼ばれるチタン酸リチウム電池を販売。10分間の急速充電で90％の充電容量を提供します。新幹線、電車、バスなど、鉄道車両やインフラ分野での採用例が多くあります。
マクセル: ボタン形チタン酸リチウム二次電池を開発。セイコーのキネティック腕時計などに採用されています。
* ニチコン: 「SLB」と呼ばれるチタン酸リチウム電池を開発、サムスンのGalaxy Noteシリーズのスタイラスペンなどに採用されています。

まとめ

チタン酸リチウム二次電池は、高い安全性と急速充電性能を両立した次世代蓄電池として、電気自動車や公共交通機関、モバイル機器など、幅広い分野で活用が期待されています。安全性と急速充電という2つの大きなメリットは、今後の技術開発や市場拡大に大きく貢献すると考えられます。しかし、比エネルギーの低さは課題であり、更なる技術革新が求められています。

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