比エネルギー

比エネルギーとは

比エネルギー（specific energy）は、物質が持つエネルギーをその質量で割った値として定義されます。この概念は、熱力学における様々な特性の定量や、物体の運動エネルギー、位置エネルギーを評価する際に用いられます。エネルギーや質量が示す量的な性質（示量性）に対し、比エネルギーは物質の固有の性質を示す（示強性）という特徴があります。

比エネルギーの単位

国際単位系（SI）では、比エネルギーの単位としてジュール毎キログラム（J/kg）が用いられます。しかし、特定の分野においては、キロカロリー毎キログラム（kcal/kg）や、英国熱量単位毎キログラム（Btu/kg）といった単位も使われます。特に食品においては、カロリー毎グラム（cal/g）、キロカロリー毎グラム（kcal/g）、ジュール毎グラム（J/g）、キロジュール毎グラム（kJ/g）といった単位で表されることもあります。放射線によって体組織に吸収されるエネルギーを評価する際には、グレイ（Gy）やシーベルト（Sv）といった単位が用いられます。

モルエネルギーとの違い

比エネルギーは、化学におけるモルエネルギー（物質のモル当たりのエネルギー）と関連しますが、両者は異なる概念です。モルは無次元単位であり、物質が決まったモル質量を持つ場合でも、モルエンタルピーのようなモル量を定量する際にはジュール毎モル（J/mol）やキロカロリー毎モル（kcal/mol）といった単位を用います。

単位換算

メガジュール毎キログラム（MJ/kg）の単位をキロワット時毎キログラム（kWh/kg）に変換するには、3.6で割ることで計算できます。また、熱力学の法則から、抽出される利用可能なエネルギーは、常に貯蔵エネルギーよりも小さくなることがわかっています。

食品における比エネルギー

食品における比エネルギーは、食品に含まれるエネルギー量を質量や体積で割った値です。カロリー密度とも呼ばれ、J/kgのほか、cal/g、kcal/g、J/g、kJ/g、cal/mL、kcal/mL、J/mL、kJ/mLといった様々な単位で表されます。

食品のエネルギーは、通常カロリーの単位で表されるため、食品の比エネルギーは「カロリー密度」として捉えられることもあります。比エネルギーは、食品が健康な組織で代謝された際に放出されるエネルギーを示します。

食品は酸素とともに代謝され、二酸化炭素と水などの廃棄物となります。アルコールを除くと、食品エネルギーの主な源は炭水化物、脂質、タンパク質で、これらが食品の乾燥重量の90%を占めます。比エネルギーに最も影響を与えるのは水分量です。炭水化物とタンパク質の比エネルギーは4cal/g(17kJ/g)であり、脂質はそれよりも2.25倍高い9cal/g(38kJ/g)です。そのため、水分量が同じ場合、脂質の多い食品は炭水化物やタンパク質の多い食品よりも比エネルギーが高くなります。また、食物繊維や糖アルコールのように吸収率の低い栄養素は、食品の比エネルギーを低下させます。

平均的な食品の比エネルギーは1.6-3cal/g(7-13kJ/g)であり、サーモン、赤身肉、パンなどがこの範囲に収まります。一方、3cal/gを超える比エネルギーを持つ食品は高カロリー食品とみなされ、クラッカー、チーズ、チョコレート、ピーナッツなどが該当します。

宇宙力学における比エネルギー

宇宙力学では、運動エネルギーや位置エネルギーが重力によって変化するため、エネルギーそのものよりも比エネルギー（出力密度）がより重要視されます。これにより、宇宙空間における物体の運動をより正確に分析・予測することができます。

関連項目

エネルギー密度
エネルギー・運動量密度
パワーウェイトレシオ
電力密度
熱量

出典

Cengel, Yunus A.; Turner, Robert H. (2005). Fundamentals of Thermal-Fluid Sciences. McGraw Hill. ISBN 0-07-297675-6

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