チック・ガンディル

チック・ガンディル

チック・ガンディル（本名：チャールズ・アーノルド・ガンディル）は、1888年1月19日にアメリカ合衆国ミネソタ州セントポールで生まれたプロ野球選手です。ポジションは一塁手で、右投右打でした。

プロとしてのキャリアは1906年に始まり、1910年にはシカゴ・ホワイトソックスでメジャーリーグの舞台に立ちました。その後、ワシントン・セネタースやクリーブランド・インディアンスでプレー経験を積み、1917年に再びホワイトソックスへ戻ります。この復帰したシーズン、彼はレギュラー一塁手としてチームのワールドシリーズ制覇に大きく貢献しました。

その2年後の1919年、ホワイトソックスは再びリーグ優勝を果たし、シンシナティ・レッズとのワールドシリーズに臨むことになります。しかし、当時のチーム内部には深刻な問題を抱えていました。ホワイトソックスのオーナーであるチャールズ・コミスキーは、チーム運営にかかる経費を極端に抑える人物として知られており、選手の待遇は他のどの球団と比較しても著しく低いものでした。選手たちの報酬は低く抑えられ、ついにはユニフォームの洗濯費用まで選手自身が負担しなければならない状況でした。このため、彼らのユニフォーム、特にトレードマークであるはずの白いソックスは常に汚れており、「ブラックソックス」と嘲笑される状態でした。

こうした球団側からの扱いに強い不満を募らせていた選手たちの中で、ギャンブル組織の首謀者とされるアーノルド・ロススタインの意を受けた人物から不正行為への協力を持ちかけられ、チーム内で最初にこれに応じたのがガンディルでした。彼はロススタインの指示により、ワールドシリーズでの故意の敗退に同意するチームメイトを募る役割を担いました。チームの主力投手や打者を含む複数の選手が八百長に加担した結果、シリーズはレッズが5勝3敗で勝利し、球団初のワールドシリーズ優勝を飾りました。

この前代未聞の不正事件は「ブラックソックス事件」として球界に大きな衝撃を与えました。そして、その2年後の1921年、事件に関与したガンディルを含む8人の選手（シューレス・ジョー・ジャクソン、エディ・シーコットら）に対して、メジャーリーグから永久追放処分が下されました。

球界を去った後、ガンディルは少年時代を過ごしたカリフォルニア州に戻り、配管工として新たな人生を歩みました。その後、1970年12月13日に心不全のため82歳でその生涯を終えました。

チック・ガンディルは、ワールドシリーズ制覇に貢献した優れた選手である一方で、球団との軋轢から不正行為に手を染め、そのキャリアを絶たれた悲劇的な人物として、メジャーリーグの歴史にその名を刻んでいます。彼の物語は、スポーツにおける倫理と金銭問題の複雑さを今に伝えています。

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