チャイニーズタイペイオリンピック委員会

中華オリンピック委員会の歴史と変遷

中華オリンピック委員会（繁: 中華奧林匹克委員會）は、中華民国の国内オリンピック委員会であり、国際的にはチャイニーズタイペイオリンピック委員会（繁: 中華臺北奧林匹克委員會、英: Chinese Taipei Olympic Committee）として知られています。その歴史は、20世紀初頭の中国におけるスポーツ振興から、国共内戦、そして国際的な政治的対立を背景に、複雑な変遷を遂げてきました。

中国オリンピック委員会 (1922年 - 1959年)

1922年、中華業餘運動聯合会が設立され、後に中国オリンピック委員会として国際オリンピック委員会（IOC）に承認されました。初代主席には、外交官の王正廷が就任しました。1924年のパリ大会にはテニス選手団を派遣しましたが、競技参加は棄権。1932年のロサンゼルス大会には、陸上競技選手の劉長春が参加し、中国初のオリンピック代表選手として認知されています。

1949年、国共内戦の結果、中華民国政府は台湾に移転。1951年には、中華全国体育協進会も台湾に移転し、IOCからの承認を受けました。一方、中国大陸では中華人民共和国が成立し、新たな中国オリンピック委員会が設立され、両者が「中国」の代表権を主張しました。1952年のヘルシンキ大会では、双方の参加が認められましたが、中華民国側はボイコット。1956年のメルボルン大会では、双方の選手団が参加しましたが、中華人民共和国は中華民国が国旗を掲げたことに抗議し、参加を取りやめました。1958年、中国大陸側がIOCから脱退したことで、オリンピックにおける「二つの中国」問題は一時的に解決しました。

中華民国オリンピック委員会 (1960年 - 1979年)

1959年、IOCは「台北の中国オリンピック委員会」の名称承認を停止し、別の名称での申請を求めました。これを受け、中華全国体育協進会は中華民国オリンピック委員会（英: Republic of China Olympic Committee）として申請。1960年に承認されましたが、大会では「台湾」または「フォルモサ」の名称を使用するように求められました。同年のローマ大会では、中華民国選手団は「フォルモサ」名義で参加し、「抗議中」の横断幕を掲げました。1964年東京大会と1968年メキシコシティ大会では、「台湾」名義で参加しました。

1968年には、中華民国（China R.O.）名義での出場が認められましたが、1971年の国連総会決議により中華民国の国際的地位は低下しました。1973年、中華民国政府は中華全国体育協進会を中華民国体育運動総会と中華オリンピック委員会に分割。オリンピック活動を推進する組織を独立させました。

1975年、中国大陸側がIOC復帰を申請しましたが、「中華民国を排除する」という条件が含まれていたため却下。その後、中華人民共和国は中華民国の国際スポーツ参加を妨害する動きを強めました。1976年モントリオール大会では、開催国カナダが中華民国に対し「台湾」名義での参加を求め、中華民国はこれを拒否し、大会をボイコットしました。

1978年、IOCは中華人民共和国の復帰と中華民国の排除を求める動議に直面し、圧力が高まりました。1979年、中華人民共和国の復帰が決定されるとともに、中華民国の承認も継続されました。しかし、両者の並立を認める決議は中国大陸側が受け入れず、同年10月、IOC理事会は「北京のオリンピック委員会を中国オリンピック委員会とし、中華人民共和国の国旗・国歌を使用する」「台北のオリンピック委員会はチャイニーズタイペイオリンピック委員会として残留するが、中華民国の国旗・国歌とは異なる旗・歌を使用する」という内容の「名古屋決議」を採択しました。

チャイニーズタイペイオリンピック委員会 (1981年 - 現在)

中華オリンピック委員会は名古屋決議を受け入れず、IOCを提訴しましたが、最終的には和解。1981年に「ローザンヌ協定」を締結し、中華民国は「チャイニーズタイペイ」の名称、中華オリンピック委員会旗（梅花旗）、中華オリンピック委員会歌を使用することで合意しました。1984年のサラエボ大会で「チャイニーズタイペイ」として復帰し、現在に至っています。

このように、中華オリンピック委員会は、その設立から現在に至るまで、政治的な背景や国際的な力関係の影響を受けながら、複雑な変遷を遂げてきました。その歴史は、国際スポーツにおけるアイデンティティの問題を浮き彫りにするものであり、今後も注視されるべき課題と言えるでしょう。

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