チャーリー・ワッツ

チャーリー・ワッツ：ローリング・ストーンズの心臓

概要

1941年生まれのチャーリー・ワッツ（本名チャールズ・ロバート・ワッツ）は、イギリスを代表するロックバンド、ローリング・ストーンズのドラマーとして世界的に知られています。ミック・ジャガー、キース・リチャーズと共にバンドのオリジナルメンバーとして、デビュー以来長きにわたってその活動を支え続けました。ジャズの影響を強く受けた独自のドラミングスタイルは、ストーンズのサウンドに独特のグルーヴと深みをもたらし、バンドのアイデンティティを形成する上で欠かせない要素となりました。また、彼はソロ活動でも精力的にジャズ演奏を行い、高い評価を得ています。`ローリング・ストーン誌`、『LA Weekly誌』の選定においても、歴史上最も偉大なドラマーの一人として名を連ねています。


初期の人生と音楽との出会い

ロンドンに生まれ育ったワッツは、1953年、従兄弟が所有するレコードを通じてジャズ音楽の魅力に開眼します。ビリー・エクスタインのレコードを購入し、ジャズにのめり込み、1955年に両親から贈られたドラムセットを練習に励みました。美術やスポーツにも才能を発揮し、ハロウ・アート・スクール（現ウェストミンスター大学）に通学しながら、ジャズクラブで演奏活動を始めるなど、多方面で才能を開花させました。卒業後は広告会社に就職し、グラフィック[[デザイナー]]として働きつつも、バンド活動は継続。カフェやジャズクラブで演奏する日々を送っていました。


ブルース・インコーポレイテッドとローリング・ストーンズ

1959年には、アレクシス・コーナーと交流を始めます。コーナーが結成したブルース・インコーポレイテッドへの加入を誘われたものの、仕事の都合で一度は断念。しかし1962年にロンドンに戻ると、再度の誘いを受けて加入を決意します。これが彼にとって初の専属バンドとなります。このバンドでミック・ジャガー、キース・リチャーズ、ブライアン・ジョーンズらと出会い、特にリチャーズとの出会いは、彼の音楽的視野を大きく広げることとなりました。ブルース・インコーポレイテッド在籍中は、主にシカゴ・ブルースやR&Bといった黒人音楽に触れる機会を得て、自身の音楽性の幅を広げました。後にローリング・ストーンズに加入する直前には、ジンジャー・ベイカーにドラムの座を譲る形で同バンドを脱退しています。1963年、ローリング・ストーンズに加入。当初は数ヶ月の活動と予想していましたが、結果的に半世紀以上にわたってバンドの心臓部として活躍することになりました。


ローリング・ストーンズでの活動とドラミングスタイル

ストーンズ加入後、バンドは瞬く間に世界的な人気を獲得します。「サティスファクション」「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」「ペイント・イット・ブラック」など、数々の名曲で力強いドラム演奏を披露。そのスタイルは、ハイハットの連打を控え、スネアドラムのサウンドを際立たせる、独特の省エネ奏法として称賛されました。本人曰く、これは無意識のうちに身についた手癖によるものだそうです。スティックはレギュラーグリップを愛用し、シンプルなドラムセット構成ながら、独自のフィルインやシンバルワークでストーンズサウンドに奥行きとリズム感を加えました。彼はグレッチ製のドラムセットを長年愛用し、晩年はdw製のドラムを使用していました。楽器のセッティングも、衣装が見えやすいように低く設定することで知られています。キース・リチャーズはワッツのドラミングに絶大な信頼を寄せ、「チャーリーがいなければローリング・ストーンズは存在しない」とまで発言しています。


ソロ活動とジャズへの情熱

1980年代には、ヘロイン中毒とアルコール依存症に苦しむ時期もありましたが、1986年からはソロ活動として自身のジャズバンドを率いて活動を開始。ジム・ケルトナーとの共同プロジェクトなど、ジャズドラマーとしての活動を精力的に続けました。彼のジャズへの情熱は、ストーンズのレコーディングにも影響を与え、ソニー・ロリンズやウェイン・ショーターなど、多くのジャズミュージシャンがゲスト参加しています。また、ストーンズのツアー中にもジャズクラブに訪れ、飛び入り参加することもありました。


晩年と死去

2004年に喉頭がんと診断され、放射線治療を受けましたが、その後も活動を続けました。しかし、近年はツアーへの意欲を減退させ、ストーンズからの脱退を噂されることもありました。2021年8月24日、ロンドンにて80歳で死去。音楽界に大きな衝撃を与えました。


人物像

ワッツは、ワイルドなイメージのストーンズメンバーの中でも、唯一初婚を貫いた愛妻家として知られていました。紳士的な風貌と控えめな性格で知られていますが、若き日は熱血漢の一面も持ち合わせていました。ステージ上では、感情をあまり表に出さず、クールな表情で演奏する姿が多くの音楽誌で取り上げられました。レコーディングでは、キース・リチャーズの24時間ぶっ通しのスタジオ作業にも最後まで付き合うなど、そのストイックな姿勢はバンドメンバーからの信頼も厚かった。


グラフィック[[デザイナー]]としての才能

ワッツはプロミュージシャンになる以前はグラフィック[[デザイナー]]として働いており、その才能はストーンズのステージセットのデザインやグッズのデザインチェックにも生かされました。ツアー先ではホテルの部屋の内装をスケッチするなど、芸術家としての感性も持ち合わせていました。


ストーンズからの脱退騒動

2009年、ワッツがストーンズを脱退するという報道がありましたが、バンド側はこれを否定。その後も脱退の噂は繰り返し報じられましたが、ワッツ自身はストーンズへの愛着を表明し、2012年から2013年にはバンドとして活動しています。


ディスコグラフィ（リーダーアルバムのみ抜粋）

ライブ・アット・フルハム・タウン・ホール (1986年)
フロム・ワン・チャーリー (1991年)
ウォーム＆テンダー (1993年)
ロング・アゴー＆ファー・アウェイ (1996年)
チャーリー・ワッツ・ジム・ケルトナー・プロジェクト (2000年)
Watts at Scott's (2004年)
チャーリー・ワッツ・ミーツ・ザ・ダニッシュ・ラジオ・ビッグ・バンド (2017年)


参考文献

『チャーリー・ワッツ論――ドラマーを憐れむ歌 ザ・ローリング・ストーンズのリズムの秘密を探る』（DU BOOKS）


チャーリー・ワッツは、ローリング・ストーンズという伝説的バンドの心臓部として、その音楽史に燦然と輝く足跡を残しました。彼のドラミング、人となり、そしてジャズへの情熱は、これからも多くの音楽ファンを魅了し続けるでしょう。

もう一度検索