アレクシス・コーナー

アレクシス・コーナー：ブリティッシュ・ブルースの父

アレクシス・コーナー（1928年4月19日 - 1984年1月1日）は、イギリスのブルース・シーンにおいて、その功績から「ブリティッシュ・ブルースの父」と称えられる伝説的なミュージシャンです。フランス・パリで生まれた彼は、幼少期を様々な国で過ごし、1940年5月にロンドンに移住しました。

ロンドンでの生活が始まると、1940年代後半にギターとピアノを習得し、1950年代半ばには本格的にブルース演奏を始めます。その才能を開花させたのは、ハーモニカ奏者シリル・デイヴィスとの出会いでした。彼ら2人は協力して、ロンドンのソーホー地区に「ロンドン・ブルース・アンド・バレルハウス・クラブ」を設立しました。これはイギリスで最初のブルース・クラブとして知られ、ビッグ・ビル・ブルーンジー、ソニー・テリー、ブラウニー・マギー、そしてマディ・ウォーターズといったブルース界の大物たちがステージに立ちました。このクラブは、後のイギリスのブルースシーン隆盛の礎を築いた重要な場所でした。

1961年、コーナーはデイヴィスと共に「アレクシス・コーナーズ・ブルース・インコーポレイテッド（通称ブルース・インコーポレイテッド）」を結成します。1962年3月からは、ウェスト・ロンドンのイーリング・ジャズ・クラブで毎週土曜日の公演を始めました。初期メンバーには、コーナー自身（ギター）、デイヴィス（ハーモニカ）、アート・ウッド（ボーカル）、そして後にローリング・ストーンズのドラマーとして有名になるチャーリー・ワッツが名を連ねています。

このバンドは、多くの若手ミュージシャンにとって登竜門となりました。ロング・ジョン・バルドリー（ボーカル）、ディック・ヘクストール＝スミス（サクソフォーン）、ジャック・ブルース（ベース）、ジンジャー・ベイカー（ドラムス）、グレアム・ボンド（サクソフォーン）など、後のイギリス音楽シーンを彩る多くの才能が、ブルース・インコーポレイテッドに参加しました。特に注目すべきは、のちにローリング・ストーンズを結成するメンバーとの関わりです。ブライアン・ジョーンズはコーナーのライブに参加しており、そこでミック・ジャガーとキース・リチャーズに見出されたことが、ストーンズ誕生のきっかけになったと言われています。

1967年にはアルバム『I Wonder Who』をリリース。この作品には、後にペンタングルのリズム隊となるダニー・トンプソンとテリー・コックスが参加しています。また、この頃には、後に著名なミュージシャンとなるフリーを支援し、デビューを後押しするなど、後進の育成にも力を注いでいました。1968年には、レッド・ツェッペリン加入前のロバート・プラントと共演し、その音源は1972年に編集盤『ブートレグ・ヒム!』としてリリースされました。

1970年には、ピーター・ソラップらとCCS（Collective Consciousness Society）を結成し、レッド・ツェッペリンの「胸いっぱいの愛を」のカバーである「Whole Lotta Love」がヒットを記録しました。1971年には、ハンブル・パイのスティーヴ・マリオット、グレッグ・リドリー、ジェリー・シャーリーと共にB.B.キングのアルバム『イン・ロンドン』に参加するなど、幅広いミュージシャンとの共演を重ねています。その後も、スネイプなどのバンドを結成し、精力的に活動を続けました。

晩年には、教え子であるチャーリー・ワッツ、ジャック・ブルース、イアン・スチュワートらとロケット88を結成し活動しました。1984年1月1日、肺癌のため55歳で亡くなりました。

アレクシス・コーナーは、単なるミュージシャンとしてだけでなく、ブリティッシュ・ブルースのパイオニアとして、そして多くの才能を世に送り出した育成者として、イギリス音楽史に大きな足跡を残しました。彼の活動は、後のイギリスロックシーンの発展に大きな影響を与え、今日でも高く評価されています。彼の音楽は、多くのミュージシャンにインスピレーションを与え続け、その影響は現代においても色濃く残っています。彼の功績は、単に音楽作品としてだけでなく、世代を超えて続くミュージシャンたちの繋がり、そしてイギリス音楽文化の形成という観点からも評価されるべきでしょう。

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