チャールズ・シブリー

チャールズ・シブリー：分子鳥類学の先駆者

アメリカ合衆国の鳥類学者、分子生物学者であったチャールズ・シブリー（1917-1998）は、鳥類の科学的分類体系に革新をもたらしました。特に分子生物学的手法を積極的に導入した彼の研究は、現代の鳥類がたどってきた進化の歴史に関する理解を根本から塗り替えるほど大きな影響力を持っています。その分類法は、アメリカ鳥学会をはじめとする鳥類学関連団体が採用する体系にも強い影響を与えています。

鳥の画家として著名なデヴィッド・シブリー氏との間に血縁関係はありません。

生涯と研究の進展

シブリーはカリフォルニアで教育を受けました。キャリアの初期、第二次世界大戦中にはソロモン諸島で初めてのフィールド調査を経験しています。帰国後、彼はコーネル大学の鳥類学研究室責任者を務めたのを皮切りに、イェール大学ピーボディ博物館館長、サンフランシスコ州立大学教授および学部長など、アメリカの主要な研究機関で重要な役職を歴任しました。

彼の研究対象は時間とともに進化しました。当初の鳥類のハイブリダイゼーション（異種交配）への関心は、生物の進化や分類体系との関連性の探求へと発展。1960年代に入ると、研究手法は血液や卵白に含まれるプロテインの分子レベルでの分析、特に電気泳動を用いた研究へと移行しました。

DNA-DNAハイブリダイゼーションとその影響

1970年代初頭、シブリーは現代鳥類の真の類縁関係を解明することを目指し、DNA-DNAハイブリダイゼーションという当時としては画期的な手法を用いた研究に着手しました。この研究は初期段階では学界内で激しい論争を巻き起こしました。同僚たちの間では、その結果を実体のない誇大広告だと見なす者もいれば、絶対的な真理として受け止める者もいるなど、評価は大きく分かれていました（Ahlquist 1999）。

しかし、時が経ち研究手法が進歩するにつれて、科学者の間での見方が次第に肯定的な方向へ傾いていきました。もっとも、その状況は決して単純明快なものではありませんでした。シブリーの研究から導き出された結果のうち、例えば新顎下綱におけるキジ目と水鳥の間の強い関連性などはその後の研究でも確認されています。一方で、コウノトリ目に関する分類など、多くの誤りが含まれていることも明らかになっています。

シブリーは次第にアメリカ国内の同僚たちとは距離を置くようになり、海外の研究者と積極的に交流する機会が増えました。しかし、1980年代中頃から後半にかけて、シブリーが推進したDNA分析に基づく鳥類の系統学研究が書籍などの媒体で出版されると、学術界の潮流は大きく変化しました。これらの出版物は活発な議論を巻き起こし、極めて強い影響力を持つに至りました。

1990年には、彼は国際鳥学会の会長に選出され、その学術的権威が改めて認められました。彼の主要な著作、ジョン・アールクィストとの共著による『Phylogeny and Classification of Birds』、そしてバート・モンローとの共著による『Distribution and Taxonomy of Birds of the World』は、鳥類学の分野で最も頻繁に引用される文献となっています。前者の著作では、鳥類分類に大きな影響を与えたシブリー＝アールクィスト分類が詳細に述べられています。

人物像

シブリーは1970年代を通じて、鳥類学界において賛否が大きく分かれる人物として知られていました。これは専門的な見解の相違に加え、その個性にも起因していたようです。友人のリチャード・ショッデは彼の訃報記事で次のようにコメントしています。

「...（シブリーは）強い主張を持った反逆者だった。議論においては全てを押し流し、矛盾に我慢することができなかった。批評家は悪口を言う誘惑に駆られたし、かっとなったシブリーがそれに応酬することもあった。手短に言って、ほとんどの人間に対してすぐに寛大になることはなかったし、他の人が言うように、大学での友人も少なかった。...わたしは彼が、たとえ自分を貶めようとする相手に対しても、悪意や復讐心を抱くところを見たことがない。彼は洗練された人物とは言えなかったが、鳥類の系統樹という壮大なビジョンを心に抱き、自説の正しさと揺るぎない知性を信じる、率直で豪胆な人物であった。」（Schodde 2000より要約）

その個性からか、シブリーが他の科学者と長期にわたる共同研究を行った例は、著名な例外であるジョン・アールクィストを除いて極めて稀でした。しかしながら、彼は自らの研究に必要な血液や細胞、卵白などのサンプルを、他人から提供してもらうための交渉や説得の能力に長けていました（Ahlquist 1999, p. 856）。

シブリーの研究は、分子生物学的手法が分類学にいかに革新をもたらすかを示す先例となり、その後の多くの研究に道を開きました。

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