チャールズ・バンド

チャールズ・バンド（Charles Robert Band、1951年12月27日 - ）は、アメリカ合衆国を代表する映画プロデューサーであり、映画監督です。彼は、カルト的な人気を誇る低予算のホラー、SF、ファンタジー作品を数多く手掛けたことで知られ、特に「エンパイア・ピクチャーズ」と「フルムーン・ピクチャーズ」という二つの影響力のある映画製作会社の創設者としてその名を知られています。

彼のキャリアは1970年代、自身のプロダクションであるチャールズ・バンド・プロダクションを設立したことから始まります。そこで映画製作の経験を積んだバンドは、当時の配給システムや配給会社の対応に不満を抱くようになります。この経験が、彼に独自の製作・配給体制を築く決意をさせ、1983年にエンパイア・ピクチャーズを立ち上げる原動力となりました。

エンパイア・ピクチャーズは、設立から短期間のうちに急速に成長しました。最も勢いがあった時期には、月に平均して2本のペースで新作を精力的にリリースしており、劇場公開用とホームビデオ用の作品をそれぞれ1本ずつ発表するというスタイルで多角的な展開を見せました。この時期にエンパイアから生み出された作品には、可愛らしいようでどこか不気味なクリーチャーが登場する『グーリーズ』（1985年）やその続編『グーリーズII』（1987年）といったホラーコメディ、そしてH.P.ラヴクラフトの世界観に基づき、カルト的な人気を博すこととなる傑作ホラー『ZOMBIO/死霊のしたたり|ZOMBIO_死霊のしたたり』（1985年）など、今日でも語り継がれるタイトルが含まれています。しかし、順調に見えたエンパイアも、1988年には資金繰りの悪化により倒産という憂き目に遭います。

エンパイアの閉鎖後も、チャールズ・バンドの映画製作への情熱が失われることはありませんでした。彼は同年中に新たな製作会社「フルムーン・ピクチャーズ」を設立し、すぐに活動を再開します。フルムーンからは、彼のキャリアを代表する人気シリーズが次々と誕生しました。生きた人形たちが活躍（あるいは暴走）するスプラッターホラー『パペット・マスター』シリーズは、特にビデオマーケットで絶大な支持を得て、多数の続編が製作されるロングランシリーズとなりました。他にも、吸血鬼と異形のクリーチャーが登場する『サブスピーシーズ』シリーズなど、彼の得意とするクリーチャーホラーやSFホラーの分野で多くの作品を世に送り出しています。

また、フルムーンはホラーやSFだけでなく、ファミリー向けの作品も手掛けるために「ムーンビーム・エンタテインメント」というレーベルを設立しました。このレーベルからは、小さな恐竜たちが活躍する『プレヒステリア三部作』、具体的には『ジュラシック・キッズ』（1993年）、『リトル・レックス』（1994年）、『ミニミニ恐竜大作戦』（1995年）といった作品群が発表され、子供向け市場でも一定の成功を収めました。

チャールズ・バンドの作品は、多くが低予算ながらもユニークなアイデアと迅速な製作体制、そして人形やクリーチャーといった視覚的な要素で観客を楽しませることに焦点を当てています。彼は特に、ホームビデオ市場の黎明期からその可能性にいち早く着目し、レンタルビデオや販売、さらには自身の作品に特化したストリーミングサービスやサブスクリプションサービスを展開するなど、独自の配給・販売戦略を推し進めた先駆者としても知られています。多作であることは彼の大きな特徴であり、時には複数の監督名義を使い分けながら、膨大な数の作品を世に送り出し続けています。

私生活では、チャールズ・バンドは芸術一家に生まれました。父は映画監督・プロデューサーのアルバート・バンド、兄は作曲家のリチャード・バンドであり、祖父は風景画家のマックス・バンドでした。彼自身も二度の結婚歴があり、前妻メダとの間にはロックバンド「ザ・コーリング」のボーカルとして知られるアレックス・バンドとタリン・バンドを、前妻デブラ・ディオンとの間には2人の息子をもうけています。

近年では、自身の長年にわたる映画製作のキャリアを振り返る自伝『Confessions of a Puppetmaster: A Hollywood Memoir of Ghouls, Guts, and Gonzo Filmmaking』をアダム・フェルバーと共著で出版しており、その波乱に満ちたB級映画人生の一端を垣間見せています。

チャールズ・バンドは、メジャーなハリウッド作品とは一線を画す独自のB級映画路線を貫き、熱狂的なファンを獲得してきました。彼の多作な活動と、製作から配給までを自社で行う独立系のビジネスモデルは、インディーズ映画製作の一つの形を示しており、その影響力は今なお続いています。

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